世界大百科事典(旧版)内の全農林警職法事件判決の言及
【公務員】より
…問題は,憲法28条が勤労者に広く労働基本権を保障し,しかも,公務員もそこでいう勤労者であることは判例の等しく認めているところであることとの関連で,なにゆえ争議権の否認が合憲的に認めうるかである。この点のリーディングケースである全農林警職法事件判決(1973年最高裁判決)は,争議権の否認を〈職務の公共性〉〈公務員の地位の特殊性〉(主要な勤務条件が法定され,身分が保障されていること),あるいは〈財政民主主義〉(公務員の給与は公財政によってまかなわれるものであり,それゆえその労働条件は労使自治によって決められるのではなく,議会の財政的コントロールを受けること)などによって合憲的に肯定しうるとしている。当初最高裁は憲法13条にいう〈公共の福祉〉や憲法15条にいう〈全体の奉仕者〉を理由に争議権の一般的否認を合憲としていたが,全逓(東京)中郵事件に関する1966年の最高裁判決は,公務員の労働基本権を最大限に尊重する立場を示し,その制限は国民生活全体の利益との比較衡量による内在的制約としてのみ認められるものとした。…
【スト権奪還闘争】より
…こうしたなかで最高裁判所は公労法関係では1966年10月の全逓中郵事件判決,地公労法関係では69年4月の都教組事件判決,国家公務員法関係でも同日の全司法仙台支部事件判決で,争議行為禁止規定を合憲としながらも,その適用にあたっては,その目的が労働組合法1条1項の目的を達成するものである限り,また職務の停滞が国民生活に及ぼす影響を考慮して,制裁も必要な限度を超えない程度にとどめ,とくに刑事制裁には慎重であるべきだとする解釈を多数で示し関係諸組合を安堵させた。しかし73年4月,最高裁判所は全農林警職法事件判決で,この判例をくつがえし,公務員の争議行為一律禁止を合憲とした。また77年5月,名古屋中郵事件判決でも公労法についての最高裁判所の判例変更が行われた。…
【争議権】より
…最高裁判所は,全逓東京中郵事件判決(1966年10月)で労働基本権について,(1)必要最小限度の制限にとどめること,(2)国民生活に重大な障害をもたらすおそれのあるもの,(3)刑事制裁を必要やむをえない場合に限定すること,(4)代償措置を講ずることの4基準を立て,この基準を満たす限り争議行為の制限は合憲であることを示した。その後,全農林警職法事件判決(1973年4月)で判例を変更し,一律禁止を合憲とした。その理由を,〈公務員の地位の特殊性と職務の公共性〉,勤務条件の法律主義,市場的抑制力が働かないこと,代償措置として人事院勧告制度があることなどに求めた。…
※「全農林警職法事件判決」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」