世界大百科事典(旧版)内の《公爵夫人の書》の言及
【チョーサー】より
…作風もまたドリーム・ビジョン(夢に現れる幻想の形式)やアレゴリー(寓意)などの伝統的文学形式から脱却し,写実的表現方法を確立するに至る。 初期の傑作《公爵夫人の書》(1369‐70ごろ執筆)は,1369年のペスト大流行のおりに死去した彼のパトロン,ジョン・オブ・ゴーント公の夫人を追悼するために書かれた作品で,ドリーム・ビジョンの形式を用いるなど,フランス文学の影響がみられるが,単なる模倣の域を脱し,後期の作品に顕著な作者独特のユーモア,劇的手法,自己戯画化の才の萌芽がすでに認められる。《誉の宮》(未完,1374‐82ごろ執筆)は同じくドリーム・ビジョンの形式を用いているが,作者の自叙伝ともいうべき要素を含み,ダンテの《神曲》の影響が認められる。…
※「《公爵夫人の書》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」