処女膜閉鎖(読み)しょじょまくへいさ(英語表記)Imperforate hymen

六訂版 家庭医学大全科 「処女膜閉鎖」の解説

処女膜閉鎖
しょじょまくへいさ
Imperforate hymen
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 処女膜に開口部がなく閉鎖している場合をいいます。

 腟は、胎児発生の過程で将来子宮卵管に発育するミュラー管の末端部の細胞と、それに接する部分の尿生殖洞(にょうせいしょくどう)の細胞が同時に増殖して充実性の腟板(ちつばん)を形成し、胎生5カ月までに腟板内部が空洞化して管状となります。

 この時点では腟腔と尿生殖洞は処女膜により分離されており、その後、処女膜が破裂します。この過程に障害があると処女膜閉鎖となります。

症状の現れ方

 通常、卵巣や子宮には異常を認めないため、思春期月経が発来すると、月経血が腟内にたまって処女膜は青紫色に膨隆(ぼうりゅう)し、また貯留量が多くなると膀胱・尿道を圧迫して尿閉(にょうへい)に至ることもあります。さらに進行すれば、子宮や卵管にも月経血がたまり、月経血をみないまま周期的に腹痛を来します(月経モリミナ)。

診断と治療の方法

 新生児期の診察で処女膜閉鎖を疑われることもありますが、腟管の状態まで診断することは不可能であり、また、その後自然に開口することもあるので、とくに処置は行いません。大部分は思春期に前述の症状を来して診断されます。

 治療としては、処女膜を十字あるいは輪状に切開して、切開(そう)は再閉鎖しないように辺縁を縫合処置します。

 長期に子宮留血症(りゅうけつしょう)や卵管留血症を放置すると不妊症原因となりますので、診断されれば早期に治療することが望まれます。

百枝 幹雄

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の処女膜閉鎖の言及

【鎖陰】より

…性器の管腔の一部が閉鎖した状態で,性器閉鎖症ともいう。鎖陰は部位によって処女膜閉鎖atresia hymenalis,腟閉鎖atresia vaginae,腟狭窄症stenoisis vaginaeや子宮頸管閉鎖に,また原因によって先天性と後天性に分類される。先天性のものは性器の発育異常で,処女膜閉鎖や腟閉鎖の一部のものがこれに属し,後天性のものでは頸管閉鎖が多い。…

※「処女膜閉鎖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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