世界大百科事典(旧版)内の《勧善桜姫伝》の言及
【桜姫全伝曙草紙】より
…丹波国鷲尾義治の正妻野分の方が,寵妾玉琴を惨殺したことに端を発し,玉琴の怨念がさまざまな形で野分の方にたたり,その娘桜姫にも,玉琴の死体から生まれ成長して清水寺僧となった清玄が恋慕し,愛欲の死霊となってまつわりつづけるという物語を主筋とし,これに発心する鈴虫・松虫姉妹,復讐する怪盗蝦蟇丸(がままる),忠臣弥陀二郎などがからむといった錯綜した複雑な趣向で,二人桜姫や屍姦譚をふくんだ妖美で怪奇な世界がつくられている。《勧善桜姫伝》(大江文坡著,1765)を直接の粉本とするが,他に近松門左衛門の《一心二河白道(いつしんにがびやくどう)》(1698)や,染殿后を襲った紺青鬼(こんせいき)伝説,市森長者の娘桜姫難産死の伝説などを構想上に生かし,江戸伝奇小説の基本的パターンを作った記念碑的な作品である。ライバルの曲亭馬琴もこの作を高く評価した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」