世界大百科事典(旧版)内の受刑者使役の言及
【懲役】より
…すなわち,受刑者が心神喪失状態になった場合は必ず(刑事訴訟法480条),刑の執行によって著しく健康を害するおそれがあるとき,70歳以上であるとき,妊娠150日以上および出産後60日未満のとき,刑の執行によって回復不可能な不利益を生じるおそれがあるとき,祖父母または父母が70歳以上または重病ないし不具で,ほかに保護する親族がないとき,子または孫が幼年で,ほかに保護する親族がないとき,その他重大な事由があるときには,検察官の裁量によって執行停止される(482条)。監獄拘置とともに定役賦科を刑罰内容とする点が,禁錮・拘留との違いであるが,このような懲役を中心的な自由刑とした背景には,18,19世紀のヨーロッパにおいて,自由刑が死刑に取って代わった際に,浮浪者や軽罪者に強制作業を課した懲治場とガレー船漕奴刑や植民地流刑等にみられる受刑者使役の伝統のうえから,単なる施設拘禁では刑罰内容として不十分とされたことがうかがわれる。このような懲役は,18世紀の監獄改良家J.ハワードの唱えた労働をとおしての犯罪者改善という理想とともに,19世紀にも経済的意味のない空役として現実化したこらしめのための苦役をも担うものであった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」