世界大百科事典(旧版)内の天皇直訴事件の言及
【被差別部落】より
…そこでの差別は,軍隊内業務・労働面における任務の課され方,個人に対する非公式の呼称,いやがらせ等々,枚挙にいとまがない状況であったが,外部とは隔絶した組織機構内でのこととて,容易には洩れず,被差別部落出身兵士たちはひたすら忍耐するほかはなかったのである。しかし,1926年(昭和1)の〈福岡連隊事件〉(九州水平社幹部で入隊した井元麟之(いもとりんし)らによる軍隊責任者の追及と,これに発する水平社への弾圧),翌27年の名古屋での陸軍特別大演習観兵式における〈天皇直訴(じきそ)事件〉(岐阜歩兵第68連隊兵士であった北原泰作(きたはらたいさく)が天皇に直接,差別の撤廃を訴願し,懲役1年の実刑)などは,〈天皇の軍隊〉がもつ差別的体質について国民の認識を促そうとした被差別部落出身兵士たちの果敢な行動として,部落解放運動史上,末永く記憶されるに違いない。 さて,糾弾闘争の展開と,それにともなう差別の顕然化のなかで,水平社運動は,さらなる重圧と試練に耐えねばならなかった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」