朝日日本歴史人物事典 「常慶」の解説
常慶
生年:永禄4(1561)
江戸初期の楽焼の陶工。楽家の2代とされる。『宗入文書』によれば,田中宗慶の次男で,兄は庄左衛門宗味。幼名与次,のちに吉左衛門と称した。宗慶と宗味,常慶は初代楽長次郎の工房で楽茶碗の制作に従事していたが,なぜ常慶が長次郎の跡を継ぎ楽家2代と数えられることとなったかは不明。『旦入之尋問之返書』によれば「鬼瓦之端著は聚楽之御殿に仰付られ候なり。二代目常慶作。其節天下一之号下され置候」とあり,天正2(1574)年銘の長次郎の獅子棟瓦が知られているように,常慶も瓦焼を行っており,また長次郎と同じく「天下一」の称を得ている。常慶の作風は,茶碗では長次郎以来の作風を受け継ぎながら,時代の流行の沓形の茶碗や,土見せの高台など積極的に新しいものを取り入れ,また獅子形や阿古陀形の香炉などでは,常慶に始まる「香炉釉」と呼ばれる白楽釉を用いる。作品には宗慶とは異なる楽印「常慶印」を捺している。
(伊藤嘉章)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報