…生没年不詳。10巻からなる《建築十書De architectura libri decem》の著者として知られる。カエサルと知己であり,オクタウィアヌス(アウグストゥス帝)のもとで建設関係の公職につき,またファヌムのバシリカの設計を行ったなどのほかは,経歴は不詳。…
…しかしローマ人にとってオーダーは,本来固有の形をもたないコンクリートの塊に建築的秩序を与える手段として重視され,引き続きさまざまな工夫が加えられた。これらの体系に関しては,前1世紀のウィトルウィウスの《建築十書》が唯一の典拠であるが,彼にあってはこれらはまだ,彼のあげる建築の要件の一つ〈オルディナティオordinatio〉とは直接に結びつけられておらず,その比例関係も固定的なものではなかった。これらを〈オーダー〉の名のもとに建築の最高の規範にまで高めたのは,L.B.アルベルティ以後のルネサンス建築家たちであった。…
…そこではエウパリノスEupalinos(前6世紀のギリシアの技術者)やアルキメデスや李冰(りひよう)や飛驒工(ひだのたくみ)などがあげられている。このような扱い方が支配的だった時代に,ウィトルウィウスの《建築十書》や大プリニウスの《博物誌》や中国の〈考工記〉が,メカニズムや材料を中心とした技術の扱いを示していることは注目に値する。 中世では伝統が重んじられていたので,新機軸よりも信頼性や洗練度が重視され,技術は芸術に近いものになった。…
…これは,建築がまず用途や目的をもち,風雪や時の流れに耐えねばならない実用品であること,大規模で重量があり,重力,風力,地震力,攻撃力のような大きな物理的な外力に耐えなければならない構造物であること,そして,以上の要求を満たしたうえで,しかも見苦しくなく,できれば美しく,なるべく意味深い形態をもつ象徴物でありたいこと,という三つの条件を満足させなければならないことに関係している。古代ローマの建築家で,ギリシアの建築家たちの技術と思想を伝えたウィトルウィウスは,前30年ころ《建築十書》を著し,そのなかで,有用さutilitas,耐久力firmitas,美しさ(魅力)venustasという建築3原則で,このことを要約している。古来,建物を建てる人々は,財力,入手し得る材料,技術,労働力が許す限り,これらを同時に達成する方法を考えてきた。…
※「建築十書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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