朝日日本歴史人物事典 「当麻国行」の解説
当麻国行
鎌倉後期の大和(奈良県)の刀工。北葛城郡当麻に住し,当麻寺と関係があったとみられている。大和鍛冶は千手院,手掻,尻懸,当麻,保昌が大和五派と呼ばれて大きな鍛冶集団を形成していたが,国行は当麻派の祖で,江戸時代の刀剣書では正応(1288~93)ごろ,あるいは正和(1312~17)ごろとしている。弟子の国清に延文5(1360)年の年紀作があることが『埋忠銘鑑』に掲げられていて,ほぼ年代は肯定できる。在銘の作品は少なく,代表作に福山藩阿部家伝来の太刀(国宝),大阪藤田美術館蔵の小太刀(重文)があげられる。鍛えは小板目に柾目が交じり,刃文は直刃がほつれて小互の目が交じり沸がよくつき,大和物共通の作風をみせるが,他の大和物と比べ,鍛えは精美で,刃も冴えて明るい。一門に国清,友清,光夫などがいる。
(原田一敏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報