世界大百科事典(旧版)内の《徳の勝利》の言及
【ギリシア神話】より
… ルネサンス期になって急速に増加する,古代の神話や英雄伝説に題材をとった美術においては,神々や英雄は古代にもっていた外見をいちおう取り戻してはいるが,本質的には先にあげた三つの神話解釈の粋内にある作例が多い。たとえばフェラーラのスキファノイア宮殿のフレスコ(コッサ画,1470ころ)にはギリシアの神々が黄道十二宮や一年の各月との関連において描かれているし(自然的伝統),マンテーニャはイザベラ・デステのための作品《徳の勝利》(1502)において,ビーナス(ウェヌス)を打ち負かすミネルウァの姿を借りて悪徳に対する知恵の勝利という中世のプシュコマキアpsychomachiaの伝統をひく主題を描いている(道徳的伝統)。さらに1500年代のイタリアで制作された本格的な神話画であるボッティチェリの一連の作品(《春》《ビーナスの誕生》《パラスとケンタウロス》など)における人文主義的な寓意も,当時のフィレンツェの新プラトン主義思想を反映していると同時に,神話に教化的な意味を担わせている点では〈道徳的伝統〉の系列に属するともいえよう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」