世界大百科事典(旧版)内の《忠岑十体》の言及
【歌論】より
…〈凡そ歌は心深く,姿清げにて,心にをかしきところあるをすぐれたりといふべし〉(《新撰髄脳》),〈詞たへにして余りの心さへあるなり〉(《和歌九品》)と秀歌の条件が記されているとおり,〈心〉と〈言葉〉の調和を重視しつつ,漠然とながら,余情という一つの価値規準への回路を開き,心詞の関係に歴史的方向性を与えたのであった。いまひとつ,この時代の歌論に《忠岑十体(ただみねじつてい)》(《和歌体十種》とも呼ばれる)がある。歌を様式面から10種に分類把握する歌論書である(和歌十体(じつてい))。…
【壬生忠岑】より
…《古今集》以下の勅撰集に84首,家集に《忠岑集》がある。和歌を10種類の歌体に分け,5首ずつの例歌と歌体の説明を漢文で施した歌論書《和歌体十種》(《忠岑十体(ただみねじつてい)》ともいう)は忠岑作と伝えられるが,最近では忠岑に仮託されたとする偽書説が有力である。《和歌体十種》を根拠として,忠岑は90歳ころまで生存したとされていたが,もう少し早い時期に没したらしい。…
【和歌十体】より
…中国詩学の詩体分類法にならって,和歌の表現様式を10種の範疇に区分した歌学書の汎称。最初に10世紀末から11世紀ころの壬生忠岑作とされる《忠岑十体(ただみねじつてい)》(偽書説もあり)があって,主として審美論的基準で古歌体,神妙体,直体,余情体,写思体,高情体,器量体,比興体,華艶体,両方致思体を立てたのに始まる。後の書では藤原定家(仮託書とも)《定家十体》が,より内在的に表現論的立場で鎌倉期和歌批評の基本概念を盛りこみ,その立場は定家に仮託された歌学偽書群に継承され,尊重された。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」