急性高山病(読み)きゅうせいこうざんびょう(その他表記)Acute mountain sickness

六訂版 家庭医学大全科 「急性高山病」の解説

急性高山病
きゅうせいこうざんびょう
Acute mountain sickness
(中毒と環境因子による病気)

どんな病気か

 急性高山病は、急速に高地に到達した際に、その低酸素環境により生じる急性の呼吸・循環・中枢神経症状を主体とした症候群です。

 急性高山病には、1~2日で自然に軽快する軽症の「山酔(やまよ)い」とも呼ばれる病態から、早急に治療を必要とする「高地肺水腫(こうちはいすいしゅ)」や「高地脳浮腫(こうちのうふしゅ)」などの重症の病態まで含まれます(表17)。

 通常、高地に順化していない人が、海抜2500m以上の高所へ数時間のうちに到達した場合に、急性の低酸素血症が生じ、その結果高山病が発症します。高山病の発症は、高地到達後2~3日以内のことが多く、重症例は若年の男性に多くみられます。

原因は何か

 高度の増加に伴い吸入酸素分圧が低下します。その結果、換気不足に陥り低酸素血症が引き起こされ高山病が発症します。高山病の発症率、重症度、罹患期間は、到達する高さ、到達速度に左右されます。また、登山による疲労や脱水、寒冷や乾燥などの環境要因、高地順応の程度や心肺機能などの個体差、高地での飲酒鎮静薬服用、さらに睡眠不足なども発症の促進や病態の進展に関与します。現在のところ、高山病の発症を正確に予測することは困難です。

症状の現れ方

 通常、2500m以上の高地に到達すると、数時間から1日以内に山酔いがみられます。高度の増加に伴って、高地肺水腫、高地脳浮腫、高地網膜(もうまく)出血などが合併します(表18)。

検査と診断

 臨床症状(表18)の現れ方が診断の決め手になります(図9)。検査所見(表19)は、病態の把握に有用です。

治療の方法

 早期発見、早期治療が治療方針の鉄則です。救急処置としては、安静、保温酸素吸入、迅速な下山が基本となります(図10)。

予防対策

 休息をとりながら、ゆっくりと高地へ到達することが必要です。高地でのアルコール摂取や鎮静薬の服用、過激な肉体労作、寒冷曝露(ばくろ)、睡眠不足などは避けなければなりません。アセタゾラミド(ダイアモックス)を登山開始の約12時間前から内服(1日250㎎)することも予防法のひとつです。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の急性高山病の言及

【高山病】より

…高山病発生の生体内機序はまだ不明な点も多いが,低酸素血症と寒冷ストレスがもたらす乏尿による脳の浮腫状態や過呼吸による血中二酸化炭素濃度の低下が呼吸中枢の感受性変化に関与することが示唆されている。こうした急性高山病とともに,アンデス高地居住者の間に肺水腫や高度の赤血球増多を呈する慢性高山病が存在している。【竹本 泰一郎】。…

※「急性高山病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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