六訂版 家庭医学大全科 「慢性下痢」の解説
慢性下痢
まんせいげり
Chronic diarrhea
(食道・胃・腸の病気)
どんな病気か
1日に消化管に入ってくる水分の量は、経口摂取と分泌される消化液で約10ℓです。そのほとんどが小腸で吸収され、糞便としては約0.1~0.2ℓ排泄されます。腸管に流入する単位時間あたりの水分量(大腸の1日あたりの最大水分吸収能は5~6ℓ)が、その吸収能力を超えると下痢になります。
下痢とは、便の水分量が増えて、液状から泥状またはそれに近い状態になったものとされ、慢性下痢の人は約3%とされています。症状が3週間以上続く時には慢性下痢といわれます。下痢は、その病態生理から、
原因は何か
浸透圧性下痢は、腸管に吸収されない食べ物や薬剤により浸透圧が上昇し、水分と電解質が腸管内に移行することによって起こります。分泌性下痢は、細菌の毒素やウイルス、胆汁酸や脂肪酸、ホルモンなどによる腸管からの水分の分泌亢進により起こります。
腸管粘膜障害による下痢は、炎症性腸疾患や細菌などにより腸管から
腸管運動異常による下痢は、腸管運動の亢進や低下によって起こります。
最近では、機能性疾患である
下痢の原因による分類では、小腸や大腸の器質的な異常(
症状の現れ方
水分(電解質)が必要以上に体外に排出された状態なので、その程度に応じた脱水状態になっています。下痢の原因にもよりますが、貧血、発熱、腹痛、体重の減少などを伴うこともあります。
検査と診断
貧血や炎症の有無を調べるための血液検査、潜血反応や細菌・虫卵検査のための糞便検査、大腸の器質的な異常を調べるための大腸内視鏡検査や大腸X線検査が必要です。
治療の方法
対症療法として、下痢の程度に応じて水分・電解質の補給を行いますが、下痢の原因疾患はさまざまであり、下痢を引き起こした原因疾患の治療が重要です。
成人男性の過敏性大腸症候群の下痢型に対しては、大腸痛覚伝達を抑制し、腹痛及び内臓知覚過敏を改善するラモセトロン塩酸塩(イリボー)が発売されています。
坂田 祐之, 藤本 一眞
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報