世界大百科事典(旧版)内の文法体系の言及
【文法】より
…文法というものは,どの言語でも,このように,普通,特定少数の文や語句だけについてのきまりではなく,〈一定の条件を備えた任意の文〉について,あるいは〈一定の範囲の多数の語句〉について同じように成り立つ一般性の高いきまり,すなわち規則性としてとらえられる事がらなのであり――だからこそわれわれは比較的容易に言語を習得できるわけである――,さらに,そうした種々の規則性の背後に,実はいっそう抽象度の高い原理が見いだされることもしばしばなのである(これに対し,特定の文や語句だけについてのきまりは,特に〈語法〉と呼んで区別することがある)。このように,(1)~(3)に関する一般性の高い諸々の原理や規則性と,多少の個別的なきまりとがいわば束になって当該の言語を成り立たせているわけで,それらの一つ一つのことをではなく,特にそれらを総体としてとらえた概念のことを文法(文法体系)と呼ぶ場合もある。なお一部に,文法とは,たとえば〈起きれる〉〈寝れる〉は誤りで,〈起きられる〉〈寝られる〉が正しい,というような類のこと,すなわち規範意識に基づくきまりのことだととらえている向きもあるようだが,規範意識など持ち込む以前に,すでに言語自体に上述のような多数のきまり・規則性・原理が,現実の仕組みとして存するのであり(冒頭に〈仕組み〉と書き添えたゆえんである),文法のうち,人為的に規範を持ち込める余地はさほど多くはないのである。…
※「文法体系」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」