朝日日本歴史人物事典 「松本玄々堂」の解説
松本玄々堂
生年:天明6(1786)
江戸後期の銅版画家。名は保居。通称は儀平。別名を鴨川儀平。玄々堂は堂号でその初代。京都の数珠商の家に生まれる。1cmから3cm四方の画面に地図や千字文を刻んで拡大鏡で見せる微塵銅版から,日本各地の名所旧跡を題材にした銅版画まで多数制作した。精緻ではあっても芸術的価値はさほどでもないが,大量印刷によって,医学解剖書などに限られていた銅版画の複数生産の機能をそれ以外の実用,娯楽の分野にまで拡大し,一般に銅版画を流通させた点,上方を代表する作家といえる。長男松田緑山が玄々堂2代を称した。
(佐藤康宏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報