世界大百科事典(旧版)内の為す債務の言及
【債権・債務】より
…したがって,債権者ないし債務者の交代は,債権の同一性をそこなうとされ,債権が財産として取引の客体とされることは少なく,物権を取得するための手段,他人の物を利用する手段,他人の労務を利用する方法として機能するのが,一般的であった。このような性質は,現在でも,たとえば,不動産の買主の売主に対する所有権移転請求権(債権)や,民法612条などの制約をうける賃借権,ないし,いわゆる〈為す債務obligation de faire〉(たとえば,画家に肖像画を描かせる債権など)においてみられるけれども,資本主義成立後の社会においては,金銭債権とりわけ金銭消費貸借に基づく貸金債権が,圧倒的に重要な役割を果たす。そこでは,債権者がだれであろうと,債務者は自己の負担する抽像的な一定額の価値を表象する金銭を支払うことをもって足り,かつ,債権者も即物的にその支払を受ければ足りるのであるから,金銭債権は1個の財産として流通するに至る。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」