世界大百科事典(旧版)内の無宿非人の言及
【非人】より
…もとは仏教からでた言葉で,鬼神・夜叉(やしや)など,人にあらざるものが人の姿形をかりて現れたものの意味であったが,別に,罪人・世捨人・僧,最下級の神人(じにん),乞食(こつじき)などをさす語として平安時代いらい普及し,江戸時代になってからは,賤民身分の一部をさす呼称として,公式に江戸幕府・諸藩で採用され定着した。 江戸時代に,いわゆる士農工商の諸身分の下に〈えた〉とともに賤民として位置づけられた非人は,親子代々の〈非人素性〉のものがその中心をなしたが,ほかに,犯罪や,心中の仕損じを理由として非人身分に落とされて〈非人頭(がしら)〉の配下に入れられた〈非人手下(てか)〉,生活困窮のため乞食浮浪の身となった〈無宿非人〉〈野非人(のびにん)〉があり,その内容はさまざまであった。彼らは江戸幕府のひざもとで,歴代,〈穢多頭(えたがしら)〉の地位にあった弾左衛門(だんざえもん)の統轄下に置かれたが,直接的には江戸浅草の車善七(くるまぜんしち)に代表されるような各地の非人頭,もしくは非人頭に該当する役職の者(たとえば,京都ではそれを悲田院年寄といっていた),さらには非人頭に属する多数の小屋頭たちの支配を受け,町外れや河原の非人村の小屋に住み,物乞い生活を基本としながら,大道芸,犯罪者の市中引廻し,処刑場での雑役などで,日々の暮しをたてていた。…
※「無宿非人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」