世界大百科事典(旧版)内の《父の死によせる歌》の言及
【スペイン文学】より
…また賢王の甥にあたる貴公子ドン・フアン・マヌエルの《ルカノール伯爵》は,ボッカッチョの《デカメロン》とともに後のヨーロッパ文学に多くの素材を提供した作品であるが,何よりもドン・フアン・マヌエルは審美的効果を意識して独自の文体を確立した最初の作家として重要である。
【15世紀――ルネサンスに向けて】
15世紀の後半にはイタリア・ルネサンスの影響が見られるようになり,宮廷詩人のサンティリャナ侯爵Marqués de Santillana,つまりイニゴ・ロペス・デ・メンドサIñigo López de Mendoza(1398‐1458)やホルヘ・マンリーケによって繊細な抒情詩が書かれたが,なかでも後者の《父の死によせる歌》は世界文学における悲歌の傑作として,ミルトンの《リシダス》やテニソンの《イン・メモリアム》と並び称されている。また8音節の詩行からなり偶数行のみが脚韻をふむスペイン独特の詩様式,〈ロマンセ〉が生まれたのもこの時期である。…
【マンリーケ】より
…スペインの詩人。サンチアゴ騎士団長を父にもつ名門の軍人。王位継承の内乱においてカトリック女王のイサベル1世のために戦い,英雄的な死を遂げた。父ドン・ロドリゴの死を歌った,ほぼ40連から成るただ1編の詩《父の死に寄せる歌Coplas por la muerte de su padre》(1476)で文学史上確固たる地位を占めているが,この詩は現世的なもののはかなさ,永遠の生の希求という古典的テーマに抒情的で完璧な表現を与えた絶唱で,世界文学における悲歌の傑作として,ミルトンの《リシダス》やテニソンの《イン・メモリアム》と並び称されている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」