世界大百科事典(旧版)内の《牧歌の諸変奏》の言及
【エンプソン】より
…この方法は,アメリカの〈ニュー・クリティシズム〉への道を開いた。〈牧歌〉という概念に,複雑なものを単純素朴な形式で表現する,雅(みや)びと鄙(ひな)びの対照・混淆を見て,単語やある一節より大きな単位での重層的感覚の価値を論じた《牧歌の諸変奏》(1935)は処女作をさらに一歩進めたものであり,《複合語の構造》(1951)は,一つの単語に担わされた意味を通時的・共時的に執拗に追究した労作である。1931‐34年の間滞日し東京文理科大学,東京大学で教鞭をとったあと,抗日戦争中の西南聯合大学でも教え,後年はイギリスのシェフィールド大学教授になった。…
【牧歌】より
… 牧歌は羊飼いについて,羊飼いの声で歌われる文学だが,それを書くのは宮廷詩人をはじめとする知識人である。この構造的落差の意味を拡大し,たとえばプロレタリアの生活についてプロレタリアの声でブルジョア作家が書く〈プロレタリア文学〉も,牧歌の一変種であると指摘したのが,W.エンプソンの《牧歌の諸変奏》(1935)である。牧歌というジャンルの本質を,側面から照射する達見というべきであろう。…
※「《牧歌の諸変奏》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」