発がん物質(読み)ハツガンブッシツ

化学辞典 第2版 「発がん物質」の解説

発がん物質
ハツガンブッシツ
carcinogenic substance, carcinogen

悪性腫瘍を発生させる物質総称であるが,その発がん機構は解明されていない.皮膚がんを発生させるものとして,ベンゾ[a]ピレン,7,12-ジメチルベンゾ[a]アントラセンなどの多核芳香族炭化水素がある.泌尿器系のがんを発生するものは,ベンジジン,1-ナフチルアミンなど,そのほかアニリン誘導体のアゾ色素(ジメチルアミノアゾベンゼン,2-(アミノアゾ)トルエン)があり,また4-ニトロキノリンN-オキシドは強力な発がん作用がある.ホルモンと発がんの関係も注目されており,たとえば,女性ホルモンは乳がん発生に関係がある.いずれの物質も長期にわたり反復して作用させると発がんの危険性が増大する.[別用語参照]化学発がん剤

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

知恵蔵 「発がん物質」の解説

発がん物質

がんをつくる化学物質。人工的に合成された化学物質だけでなく、自然界に存在する物質もがんをつくる。アフラトキシンに代表されるカビ毒、物が燃えた時に発生するベンゾピレン、第2級アミンと亜硝酸の食べ合わせでできるニトロソアミンなど。最も強い発がん物質は、アフラトキシン。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は、95種のヒト発がん性物質と約300種の疑いのある物質を挙げている。アスベストヒ素ダイオキシンなどもヒトの発がん物質に分類される。ヒト発がん物質の多くは、職業上あるいは医療上などの現場で特に濃厚に接する時に問題となる。普通の人のがんで、1種類の発がん物質でがんが生じることはほとんどない。

(黒木登志夫 岐阜大学学長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

栄養・生化学辞典 「発がん物質」の解説

発がん物質

 発がんをもたらす物質.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android