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眼球銀行 ガンキュウギンコウ

デジタル大辞泉の解説

がんきゅう‐ぎんこう〔ガンキウギンカウ〕【眼球銀行】

アイバンク

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大辞林 第三版の解説

がんきゅうぎんこう【眼球銀行】

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

眼球銀行
がんきゅうぎんこう
eye bank

アイバンクともいい、角膜移植に必要な角膜を確保し、安全性と質を確認して角膜移植医師へ提供することを目的とする機関である。2008年(平成20)現在日本には54のアイバンクがある。[桑原安治・坪田一男]

沿革

1928年にソ連の眼科医フィラトフВладимир Петрович Филатов/Vladimir Petrovich Filatov(1875―1956)が死体眼から採取した角膜を使い全層角膜移植に成功して以来、角膜移植術が急速に普及し、30年にはアメリカでアイバンクが発足、角膜を円滑に入手するための斡旋(あっせん)機関がつくられた。日本では1958年(昭和33)に「角膜移植に関する法律」が公布され、合法的に死体角膜を移植に使えるようになり、63年には厚生省(現厚生労働省)から「眼球あっせん業許可基準」が公示され、同年10月には慶大眼球銀行と順天堂アイバンクが、また同年12月には大阪アイバンクなど3か所がそれぞれ認可された。この「角膜移植に関する法律」は腎臓(じんぞう)移植の発展に伴い、1979年に「角膜及び腎臓の移植に関する法律」として再編された。その後、1997年(平成9)「臓器の移植に関する法律」(臓器移植法)の成立に伴い、「角膜及び腎臓の移植に関する法律」は廃止され、現在角膜移植は臓器移植法に基づいて行われている。[桑原安治・坪田一男]

眼球銀行の業務

眼球銀行の業務は、角膜移植の手術が短時間に円滑に完了するよう移植する眼球を斡旋することである。すなわち、まず、死後に眼球を提供しようとする人からあらかじめ登録してもらう。一方、角膜移植を受けたい患者はそれぞれの病院に申し出るが、病院では順番待ちのリストが整備されている。登録した人の死亡連絡を受けると、ただちに出向いて遺族の了解を得て6時間以内に眼球を摘出し、それを保存液中で管理する。全眼球保存の場合は摘出後24時間以内に角膜移植手術を行う必要があり、摘出に出動する際に順番待ちの患者に連絡してただちに入院してもらい、手術の準備を完了した病院へ摘出した眼球が直接運搬されることになる。順番待ちの患者の都合が悪ければ、リストの順番に従って連絡される。なお、一部の眼球銀行で導入されている強角膜切片保存の場合は、眼球摘出後、組織培養液を用いて角膜切片を作成し、これを保存液中で管理する。この方法では通常保存期間7~10日で、全眼球保存より時間的に余裕があるため、順番待ちの患者の都合に合わせて、予定手術を行うことが可能となる。
 眼球銀行の業務を行うには厚生労働大臣の許可を受けなければならない。私立大学に付属する眼球銀行の管理責任者は学長であり、公立大学の場合は知事であるが、国立大学では管理責任者の関係から許可を受けられないので、財団法人をつくってこれを置いている。[桑原安治・坪田一男]

アイバンクの役割と将来への課題

従来アイバンクの役割は角膜の斡旋にあると日本では考えられてきたが、欧米においてはすでに角膜の斡旋に加えて、クオリティーの確保(角膜の安全性の確保)も役割の一つに入っている。1990年代後半ごろより、厚生省のちに厚生労働省の指導もあり、現在ではドナー(角膜提供者)のC型肝炎、B型肝炎などの感染症の検査により安全が確保されている。
 日本でアイバンクが設立されたのは1963年(昭和38)であるが、2007年(平成19)現在、年間2万件の角膜移植手術の必要性に対し、1500眼ほどの眼球しか提供できず、本来の目的である眼球の確保はまだまだ不足している。この点、日本のアイバンクは社会のニーズを満たしていない。アメリカにおいては年間9万眼ほどアイバンクから提供され、角膜移植の件数も4万5000件に達している。
 早急なアイバンクの見直しが必要とされるなか、アイバンクを専門とするコーディネーターの育成により日本のアイバンクも改善される見通しがでてきた。アイバンク・コーディネーターを導入したいくつかのアイバンク(東京歯科大学角膜センター・アイバンク、大阪アイバンク、静岡県アイバンクなど)で献眼者が増加しているからである。アイバンク・コーディネーターとは、移植医療の啓発(けいはつ)、ドナー情報の収集、ドナー家族への献眼の可能性の伝達、公正・公平な斡旋の実施や記録、ドナー家族に対する精神的ケアなど適切な移植医療のための活動を行う専門家のことである。コーディネーター制度の導入は献眼者数拡大のうえで新しい局面をもたらす可能性があると期待されている。
 また、現在の日本のアイバンクには、角膜を保存しておく冷蔵庫と献眼のための登録システムがあるだけで、本当に必要な、(1)遺族へのアプローチ、(2)角膜保存、(3)安全性のチェック、(4)啓発活動、(5)活動を支える資金調達、のシステムがないところが多い。日本のアイバンク・角膜移植が発展していくためには前記のシステムを確立していくことが望まれる。[坪田一男]
『坪田一男著『アイバンク ここまで進んだ角膜移植』(1992・日本評論社) ▽坪田一男著『アイバンクへの挑戦』(1997・中央公論社) ▽坪田一男著『移植医療の最新科学』(2000・講談社ブルーバックス) ▽坪田一男著『ベストじゃなければ意味がない!――最高のアイバンクの実現に奮闘する角膜専門医の記録』(2001・芳賀書店)』

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世界大百科事典内の眼球銀行の言及

【アイバンク】より

…眼球銀行ともいう。角膜移植に要する角膜の提供を目的とする組織。…

※「眼球銀行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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