社会的責任論(読み)しゃかいてきせきにんろん

世界大百科事典(旧版)内の社会的責任論の言及

【刑法理論】より

… 新派の主張を図式的に要約すると,(1)意思の自由を否定し,犯罪を行為者の性格と環境から生ずる必然的現象とみる立場から(意思決定論),(2)犯罪行為を反社会的性格の徴表であるとし(犯罪徴表説),(3)罰せられるべきは,自由意思の発現とされてきた〈行為〉ではなく〈行為者〉であるとした(行為者主義)。そして,(4)犯罪の成立について行為者の反社会的性格・動機などの主観的側面を重視し(主観主義,性格責任論),(5)そのような反社会的性格による社会的危険性をもつ者は,社会が自己を防衛するためにとる一定の措置を甘受しなければならない負担を負うとした(社会的責任論)。そして,(6)刑罰は行為者の反社会的性格を改善・教育するための手段であって(改善刑論,教育刑論),(7)行為者の再犯の予防を目的とするものであり(特別予防論),(8)このようにして社会を犯罪から防衛するのである(社会防衛論)と主張した。…

【責任】より

…具体的にいえば,たとえば,他人所有の物をこわした者は,民事責任としては,故意・過失を問わず,生じた損害相当額の賠償を被害者になすことが要求され,それで足りるが,これと別個に問われる刑事責任としては,故意の場合で,かつ被害者の告訴があることを前提に,器物損壊罪として3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料が予定され,その範囲内で裁判所が裁量により,被害額を含む諸般の事情にかんがみ,適当と思われる刑を科し,あるいは場合によっては,刑の執行を猶予したりするのである。このような性格をもった刑事責任がいかなる根拠・見地からとらえられるべきかということについては,犯罪を行ったこと自体に対する社会倫理的非難という意味で応報的見地から考えるべきであるとする道義的責任論と,犯罪を行ったことに示される犯罪者の社会的危険性に着目し,その再犯防止という予防・教育目的から考えるべきだとする社会的責任論との根本的な理論的対立がある。現在では,両者いずれの観点も否定しきれないとして,互いに接近する傾向がみられるが,基本的な立場の差の終局的解消の見込みはなお見いだしがたい。…

※「社会的責任論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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