世界大百科事典(旧版)内の肉体演劇の言及
【演劇】より
…それは17世紀イタリアやフランスのオペラに君臨した〈舞台の魔術師〉たるあの建築家兼装置家に似ているが,20世紀の演出家は,すでにJ.コポーやE.G.クレーグ,V.E.メイエルホリドらの場合に顕著であったように,俳優の演戯とその具体的技術(演技)についてのラディカルな探求を支えにすることが多かった。その論理的帰結は,1930年代にA.アルトーが予言者的な過激さをもって主張し,60年代にいわゆる肉体演劇が実現したように(J.グロトフスキの実験室劇場,ジュリアン・ベックのリビング・シアター等),単に戯曲や劇作家の廃絶ではなく,舞台に先立って書かれたすべての分節言語の廃絶を志向し,舞台を,叫びと異形な身体運動の充満する,存在論的混沌の支配する場と変じようとする。それは俳優の身体訓練の中から一つの劇作術を造型していく手続きだともいえる。…
※「肉体演劇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」