世界大百科事典(旧版)内の落書起請の言及
【起請文】より
…中世には,誓約をとりかわす場合,起請文・誓紙が書かれる場合と,ほぼ同じ文言を言葉で述べる誓言が行われる場合とがあり,個人的な誓いから大名どうしの和睦,さらには共同体の掟の決定まで,しばしば誓紙・誓言がとり行われ,さらに,この誓紙・誓言が訴訟の場で用いられることも多かった。参籠起請,落書(らくしよ)起請,湯起請,鉄火起請などがそれで,落書は,犯人不明の犯罪のとき,無記名投票で犯人を探す方法で,湯起請,鉄火起請は熱湯の中の石や焼けた鉄棒を握らせるもので,犯罪や境相論で当事者の主張が相反したときに行われる。いずれも,手続の最初の段階でまず起請文を書かせられ,しかる後に参籠したり,落書をしたり,鉄火をつかむなどのことが行われた。…
【神判】より
…例えば火神判は鉄火(灼熱した鉄棒を握らせる),神水神判は神水起請(しんすいきしよう),沸油神判は盟神探湯(くかたち),湯起請(熱湯の中の石をとらせる)が類似のものであり,また抽籤神判にあたる鬮(くじ)とりもしばしば行われた。日本で行われた神判としては,このほか,参籠起請(2日,3日または7日,14日などあらかじめ決められた日数を社頭に参籠させる),村起請(多数の村人をいっせいに参籠させることか),落書(らくしよ)起請(無記名の落書で犯罪者を投票させる)などをあげることができる。このうち落書起請については,犯人捜査の手段にすぎず神判とはいえないとする説もあるが,票がはいること自体神意とされたことを考えれば,やはり神判の一つとみなすべきである。…
【落書】より
…しかし,その反面では,強制的に実施された落書は領民たちから漏らさず情報を得るのを目的としていたため,領民の側でも事後の処罰を避けるべく,万一にも遺漏のないようにたがいに気をつけあわねばならず,そのことが領民のあいだに自治的な気風・慣習をやしなわせることにもなった。落書を求められた領民は,事と次第によって該当者の名前を記したり,〈ミズ(見ず)〉〈シラズ(知らず)〉などと記したが,領主はいっそう確実な情報・証言を得るために,匿名ではあるが絶対に偽証のないことを神仏に堅く祈誓する旨の文言をそえた〈落書起請(らくしよきしよう)〉の提出を求めた。実施の方式は領主によって,また時と場合とによって必ずしも一定しないが,室町時代の諸例では落書を強要されたのは住民のうち15歳以上の男子であった。…
※「落書起請」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」