世界大百科事典(旧版)内の《虫めづる姫君》の言及
【堤中納言物語】より
…仮名物語。《花桜折る少将》《このついで》《虫めづる姫君》《ほどほどの懸想(けそう)》《逢坂越えぬ権中納言》《貝合せ》《思はぬ方に泊りする少将》《はなだの女御》《はいずみ》《よしなしごと》の10編の短編と,〈冬ごもる空のけしきに〉に始まる,物語の発端とおぼしき約240字の断章とから成る,総量400字詰め原稿用紙でせいぜい80枚の短編物語集である。多くは王朝貴族男女の恋を主材としたものであるが,《虫めづる姫君》は人工排斥・自然尊重の理を尊び,蝶の根源たる毛虫を愛する姫君の生態と周囲の困惑とを戯画的に描き,《貝合せ》は好色の心で忍び入った貴公子が,本妻腹の姫君との貝合せを控えて孤立無援を嘆く異腹の姫とその女童たちのために,好色の心を捨ててひそかに立派な貝を贈り,観音の助けと随喜する女童たちをかいま見て喜ぶという無償の人間愛を描くなど,同じ王朝貴族世界のことながら題材が珍しい。…
【眉】より
…貴族は男女ともに眉毛を抜き,黛を目から遠く離して水平か八字型に太く描いた。この習慣に反逆した〈虫めづる姫君〉の眉は,親たちが〈いと怪しく様異におはすること〉と心配し,〈かは虫だちためり〉と人に嘲笑されるような毛虫めいたものだった(《堤中納言物語》)。絵巻物から知られるように,黛の形や位置は身分を標示するものでもあった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」