(読み)いぶかしい

精選版 日本国語大辞典 「訝」の意味・読み・例文・類語

いぶかし・い【訝】

〘形口〙 いぶかし 〘形シク〙 (古くは「いふかし」) 物事の不明で、はっきりしない状態を、明らかにしたいという気持を表わす。
① 物事が不明で気がかりである。不明な点について知りたい、見たい、聞きたい。
書紀(720)欽明二年七月(北野本訓)「未審(イフカシ)〈略〉数歳(しばしばのとし)の間に慨然(うれ)へて志を失ふ」
源氏(1001‐14頃)若紫あはれなりつる有様も、いぶかしくて、おはしぬ」
② 疑わしい。よくわからない。不審に思われる。また、そういう状態が気にかかる。〔観智院本名義抄(1241)〕
御伽草子・福富長者物語(室町末)「いぶかしうて、首さしのべて侍るを」
いぶかし‐が・る
〘他ラ五(四)〙
いぶかし‐げ
〘形動〙
いぶかし‐さ
〘名〙
いぶかし‐み
〘名〙

いぶか・る【訝】

〘他ラ五(四)〙 (古くは「いふかる」。「いぶかし」の動詞形)
① はっきりしないので気がかりに思う。おぼつかなく思う。
万葉(8C後)九・一七五三「筑波嶺を さやに照して 言借(いふかり)し 国のまほらを つばらかに 示し賜へば」
② いきどおる。怒り狂う。
倭姫命世記(1270‐85頃)「悪神伊不迦理(イフカリ)て人民亡、火気発起而、天下不安」
③ あやしく思う。不審に思う。疑う。
古今(905‐914)仮名序王仁といふ人のいぶかり思ひて、よみてたてまつりける哥也」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四「お常はいよいよ不審(イブカ)り『それじゃアおまへは、連(つれ)人達にはぐれたのかへ』」

いぶかし‐・む【訝】

〘他マ五(四)〙 いぶかしく思う。不審に思う。
読本・本朝酔菩提全伝(1809)一「老眼を擦摩て打まもり、いぶかしむさまにてものいはざれば」

いぶかし【訝】

〘形シク〙 ⇒いぶかしい(訝)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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