世界大百科事典(旧版)内の貧困の文化の言及
【家】より
…労働者階級や農村からの移住者間では,都市の体制,生活様式への適応の必要から,相互扶助,情報を求めてファミリア的・コンパドレ的紐帯が積極的に作られ,再建される。ことに政府機関・公共施設などの社会制度が貧困層の手の届かない形である場合が多く,いわゆる〈貧困の文化〉が育つ。すなわち,期待と現実のへだたりに基づく挫折感が強く,社会参加も顕著ではないが,他方では私的な,インフォーマルなレベルでの協力関係が発達し,ファミリア的・拡大家族的協力が強く,独立自営への転換に際しては経営体として析出したりする。…
【ラテン・アメリカ】より
…そのため都市の下層階級は年々増加し,スラムの出現(メキシコ市のベシンダードvecindadやバリオbarrio,リマのバリアーダbarriada,リオ・デ・ジャネイロのファベーラ,チリのカリャンパcallampa,ベネズエラのランチョranchoなど),失業,低賃金と問題が山積している。この人々の生活はアメリカの人類学者ルイスOscar Lewisのいう〈貧困の文化〉を一部は具現しており,その特徴は(1)制度への有効的参加の欠如,(2)核家族と拡大家族レベル以上の組織の少なさ,(3)家族の特徴として,子ども時代の欠如,家族成員の離別の多さ,母親中心の傾向,兄弟・姉妹間の争いの多さ,(4)運命主義,があげられる。しかし,積極的局面も多くあり,例えば,メキシコやペルーのスラム調査によると,居住区の計画,相互扶助,健全な上昇志向,教育熱心などがみられ,田舎から持ちこんだ儀礼,祝祭,音楽が生かされており,結構人間的生活が営まれている。…
※「貧困の文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」