遅・鈍(読み)おそい

精選版 日本国語大辞典 「遅・鈍」の意味・読み・例文・類語

おそ・い【遅・鈍】

〘形口〙 おそ・し 〘形ク〙
[一] 物事の速度進度が滞りがちなさまを表わす。⇔はやい
① 動作や作用に時間がかかる。速度がゆるやかである。のろい。⇔疾(と)し
書紀(720)天武元年六月(北野本訓)「爰に百足、馬に乗りて緩(オソク)来たり」
② 頭や心の働きがにぶい。巡りが悪い。愚かだ。鈍(おぞ)い。⇔鋭(と)し
万葉(8C後)一二・二八五六「山代(やましろ)石田(いはた)の杜(もり)に心鈍(おそく)手向(たむけ)したれや妹に逢ひ難き」
[二] ある時間帯の後の方であるさまを表わす。⇔はやい
① 時がたっている。夜が更けていることをいう場合が多い。
※書紀(720)推古一二年四月(図書寮本訓)「群卿百寮早く朝(まゐ)り、晏(オソク)退(まか)でよ」
② 適当な時間を過ぎている。時機に遅れている。間に合わない。手遅れだ。
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「吾(あ)が夫君尊(なせのみこと)、何(なぞ)(ヲソク)(いでま)しつる。吾已に湌泉之竈(よもつへぐひ)せり」
[三] ((一)①から) 「…おそしと」などの形で、「…を待ちかねて」「…するや否や」の意味を表わす。
落窪(10C後)一「いとどとく車より降り給ふやおそきと、北の方『あこぎ』とて呼びののしり給へば」
[語誌](1)この語の対義語には「はやし」と「とし」の二語があったが、「とし」は多義性(疾・利・敏・鋭)の語であったので別の意に重点が移り、「疾し」の意では「はやい」一語に統合された。現在では速度の意、時間的経過の後になる意ともに対義語は「はやい」である。
(2)(一)②の強調形に「おぞい(鈍)」が生ずる。
おそ‐げ
〘形動〙
おそ‐さ
〘名〙

おそ【遅・鈍】

(形容詞「おそい」の語幹)
① のろくて時間がかかること。時が過ぎて遅れること。
※万葉(8C後)一四・三四九三「於曾(オソ)はやも汝(な)をこそ待ため向つ嶺(を)の椎の小枝(こやで)の逢ひは違はじ」
② 働き、判断などがにぶいこと。愚かで間が抜けていること。
※万葉(8C後)二・一二六「遊士(みやびを)とわれは聞けるを屋戸(やど)かさずわれを還せり於曾(オソ)の風流士(みやびを)

おそ・し【遅・鈍】

〘形ク〙 ⇒おそい(遅)

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