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…大阪生れ。歌人,詩人としては釈迢空(しやくちようくう)と名のった。信夫の手がけた領域は多方面にわたって,そのいずれも独創的な内容を持ち,民俗学的国文学,日本芸能史論の創始者であって,成し遂げた業績は後に〈折口学〉と世間から称される学問体系を作っている。…
…そうしたなかで,都合4度にわたる短歌否定論ないしは短歌滅亡論をめぐってのやりとりは,〈時代の詩〉としての問題,〈心〉と〈言葉〉の問題といった古典歌論以来の問題にあらたな角度から照明を当て,加えて西欧詩と日本の詩,伝統と現代,小説と詩といった新しい問題をとり込んで〈歌論〉の領域を広げ,かつ論点を深めたのであった。最初は,《新体詩抄》序(1882)にはじまるそれ,以下,尾上柴舟〈短歌滅亡私論〉(1910),釈迢空(ちようくう)(折口信夫)〈歌の円寂する時〉(1926),そして第2次大戦後の昭和20年代初頭のいわゆる〈第二芸術論〉時代,この4度である。歌の根拠,歌の存在理由を直接に問うたこれらの機会を典型的な場面として,〈歌論〉は文芸評論史のなかで独自の歩みを進めてきたのである。…
… 他方では,別業と文芸,あるいは研究と創作,のように複領域にわたる仕事をそれぞれ十全にとげたいという考えから,創作などにペンネームをつらぬく作家たちが登場した。医学者森林太郎が文学活動では鷗外でありつづけたのは初期の例であり,大正期以降には木下杢太郎(詩・小説等)=太田正雄(医師)や釈迢空(短歌)=折口信夫(民俗学者)がおり,現代では辻井喬(詩人)=堤清二(実業家)などをあげることができる。 文芸の資本主義化が成熟すると,今度は2人の作家が一つのペンネームで発表を続けたり(アメリカ推理作家E.クイーン),一作家が二つのペンネームで異なる作風のシリーズを続けたり(イギリス推理作家ディクソン・カー=カーター・ディクソンなど)する多作家が現れる。…
※「釈迢空」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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