朝日日本歴史人物事典 「重吉」の解説
重吉
生年:寛政5(1793)
近世尾張の漂流民。佐久島出身,半田に居住。名古屋の廻船督乗丸の船頭として文化10(1813)年に江戸からの帰航途中で漂流,統率力を発揮して世界最長484日の海上漂流に耐え,カリフォルニア沖でイギリス船フォレスタ号に救助される。シトカ,カムチャツカを経て,3年後の同13年,ロシア船で千島列島に送られ,翌年,帰郷した。国学者・池田寛親に語った『船長日記』に経験が活写されている。ロシアの器物の展示で資金を得て乗組員の供養塔を建てた。また『露西亜国衣類器物披露由来書』をつくり,わが国最初の和露単語集ともいえる『ヲロシヤノ言』をつくり売った。<参考文献>『船長日記』(『日本庶民生活史料集成』5巻),川合彦充『督乗丸の漂流』
(春名徹)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報