金環日食(読み)キンカンニッショク

デジタル大辞泉 「金環日食」の意味・読み・例文・類語

きんかん‐にっしょく〔キンクワン‐〕【金環日食/金環日×蝕】

金環食

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 「金環日食」の解説

金環日食

地球、月、太陽が、ほぼ一直線に並ぶとき、太陽が月に隠される天文現象日食といい、このうち、太陽の方が月より大きく見えるために、太陽が完全に隠れず月の外周にリング状に見える現象を金環日食(または金環食)という。これに対して、太陽が月の影に全て隠れる日食を皆既日食(または皆既食)という。太陽、月、地球は、それぞれ時期によって近づいたり遠ざかったりしているので、地球から見る太陽や月の相対的な大きさも変化し、このために皆既日食や金環日食が起こる。相対的に、太陽が地球に近く、月が地球から遠いときに日食が起こると、太陽によってできる月の影の延長上にある地表の地域では、太陽の縁から来る光によって金環日食が起こり、その周りの地域では部分日食が起こる。
日食は、月が太陽と地球の間にある新月の日に起こるものだが、新月のたびに日食が起こるわけではない。これは、月の公転軌道と地球の公転軌道が同一平面にないためで、新月であっても月の影が地球の公転軌道の上や下を通ることが多く、日食とならないことの方が多い。また、地表にできる月の影は小さく、影が地表面に落ちる範囲や時間は限られるため、日食が見られる地域や時間も限られる。
地球全体では1年に数回の日食が起きるが、皆既日食や金環日食が見られる条件がそろうことはまれである。2012年5月21日には、日本の九州地方南部、四国地方南部、近畿地方南部、中部地方南部、関東地方など広範囲で、金環日食が観測される。東京で金環日食が観測できるのは、およそ7時32分から7時37分にかけてである。この他の国内各地でも部分日食が観測できる。国内で金環日食が観測できるのは1987年9月23日に沖縄で観測されて以来25年ぶり。本州では129年ぶりとなり、次に観測できるのは18年後、2030年の北海道である。
金環日食では、リングになる直前とリングが終わった直後に、月面の高い山や深い谷によって金環が途切れ、ビーズのように映る現象「ベイリービーズ」が観測できる。皆既日食とは違い、「コロナ」や「ダイヤモンドリング」は観測されない。
なお、太陽の光は非常に強いため、金環日食や部分日食の場合でも直接観察することは危険であり、失明の危険性もある。日食の観察には専用の日食観察グラスや遮光板などを使う方法が推奨されている。

(葛西奈津子  フリーランスライター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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