世界大百科事典(旧版)内の錬金薬の言及
【金】より
…これは,まさに金が,不活性の黄金の輝きを永遠不滅に放つ希少の物質であるがゆえに,魔力ともいうべき不思議な力をもって人間を惑わしてきた事実を証言する言葉の一つである。金と人類6000年の歴史は,男も女も権力や富の象徴として金のためにだまし合い,金のために殺戮(さつりく)を繰り返してきた物語に彩られているとともに,そこには古代エジプトのツタンカーメン王の黄金の柩や古代中国の錬金術師たちが求めた不死の霊薬(錬金薬,西方ではエリクシルelixirと呼ばれた)に典型的に象徴され,かつまた実体化されたような,金を知ることによって人間が求めた〈永遠の生〉への凄絶な執念の物語にも刻印されている。おそらく歴史の初期段階から,人間が生を受けてこの世で知ったことの決定的なことの一つは,万物は流転するということ,すなわち,この現世にあっては永久に変わらないものはなに一つ存在しないということであったであろう。…
【錬金術】より
…一方,水銀や硫黄のすぐれた医薬効果を知っていたラージー(ラテン名ラゼス)は,化学者でもあり,その《秘密の書》の中で古来のものを改良した蒸留器や炉などを用い,煆焼,昇華,燃焼,溶融などの化学的操作をとおし,強酸,礬類または塩,さらに〈精〉などを作ろうとした。なかでも〈精〉,つまりすべてをつらぬき不完全なものを完全化する霊妙な物質の探究は,〈エリクシルelixir(錬金薬)〉(アラビア語al‐iksīrに由来し,英語読みではエリキサー)作り,すなわち金属の粗悪さを治すとともに,人間の病気をも治す特異な薬剤の探究に向かった。 さらに10~13世紀にかけて,イブン・シーナー(ラテン名アビセンナ),イラーキーal‐‘Irāqīなど,医化学に興味をもつすぐれた哲学者たちがたくさん輩出した。…
※「錬金薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」