世界大百科事典(旧版)内のcoincidentiaoppositorumの言及
【キリスト教】より
…人間の人格は肉であると同時に霊,時間のうちで生き成長すると同時に永遠をめざし,神以外の何者も知りえない魂の深淵を保ちつつ,他の人格との交わりにおいてはじめて人格たりうる社会的存在である。キリスト教はこうした人格の対立的な諸要求を極限まで徹底させることを通じて統一しており,この〈対立するものの一致coincidentia oppositorum〉こそ,宗教としてのキリスト教の根本的特徴を示すものといえる。
【内から見たキリスト教】
〈キリスト教とは何か〉という問いは,遅かれ早かれ,キリスト信者自身は自分たちの宗教をどう理解しているのか,という問いに行きつかざるをえない。…
【象徴】より
…すなわち,宗教的象徴は同時に幾つかの参照項をもつということである。ときには同一の象徴がまったく正反対の意味を示すことさえある(ニコラウス・クサヌスの〈相反するものの一致coincidentia oppositorum〉)。そして,それゆえに,ひじょうに簡素な構造をもつ神話や儀礼がさまざまな意味レベルをもつのである。…
【神秘主義】より
…敬虔主義【上田 閑照】
【近・現代における神秘主義運動とその周辺】
ルネサンス以降の西欧の神秘主義は,時代精神にふさわしく叡智と神秘体験のかかわりに注目した。知識を超えた知識,すなわち〈無知の知docta ignorantia〉によって〈反対の一致coincidentia oppositorum〉たる神を認識しようとしたニコラウス・クサヌスや,理性を重要視したスピノザがその代表者である。したがって,この潮流は太古の叡智を再発見するオカルティズムとも重なり,エジプトやギリシアの神秘哲学を再興するフィチーノらのヘルメス思想を経由して,J.ディーやJ.V.アンドレーエによる薔薇十字思想(薔薇十字団),マルティネス・ド・パスカリやサン・マルタンを代表とするマルティニスムなどへ分離発展した。…
【ニコラウス・クサヌス】より
…しかし,より妥当な解釈は,個体の重要視,数学・科学的研究の強調,世界はある意味で無限であるとする自然観などのゆえに,典型的なルネサンス人文主義者,過渡期の思想家として位置づけることであろう。 彼の思想の中心原理は〈対立物の一致coincidentia oppositorum〉である。有限者においては存在と本質の区別をはじめ,さまざまの区別や対立が見いだされるが,無限なる神においてそれらはすべて一致する。…
※「coincidentiaoppositorum」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」