世界大百科事典(旧版)内のdoctaignorantiaの言及
【神秘主義】より
…敬虔主義【上田 閑照】
【近・現代における神秘主義運動とその周辺】
ルネサンス以降の西欧の神秘主義は,時代精神にふさわしく叡智と神秘体験のかかわりに注目した。知識を超えた知識,すなわち〈無知の知docta ignorantia〉によって〈反対の一致coincidentia oppositorum〉たる神を認識しようとしたニコラウス・クサヌスや,理性を重要視したスピノザがその代表者である。したがって,この潮流は太古の叡智を再発見するオカルティズムとも重なり,エジプトやギリシアの神秘哲学を再興するフィチーノらのヘルメス思想を経由して,J.ディーやJ.V.アンドレーエによる薔薇十字思想(薔薇十字団),マルティネス・ド・パスカリやサン・マルタンを代表とするマルティニスムなどへ分離発展した。…
【ニコラウス・クサヌス】より
…人間理性は有限者から出発して,そこで反映されている無限者の認識に近づくのであるが,すべての比例を超越する神を把握することは決してできない。しかし,この無知は単なる無知ではなく,神へと近づくにつれて深まる無知であり,その意味で〈知ある無知docta ignorantia〉である。他方,超越的で知り尽くしがたい神は,世界においてみずからを顕示する。…
※「doctaignorantia」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」