シーニュ(読み)しーにゅ

世界大百科事典(旧版)内のシーニュの言及

【ソシュール】より

…言語とは,人間がそれを通して連続の現実を非連続化するプリズムであり,恣意的(=歴史・社会的)ゲシュタルトにほかならない。したがって,言語記号は自らに外在する指向対象の標識ではなく,それ自体が〈記号表現〉(シニフィアンsignifiant)であると同時に〈記号内容〉(シニフィエsignifié)であり,この二つは互いの存在を前提としてのみ存在し,〈記号〉(シーニュsigne)の分節とともに産出される(なお,かならずしも適切な訳語とはいえないが,日本における翻訳紹介の歴史的事情もあって,signifiantには〈能記〉,signifiéには〈所記〉の訳語がときに用いられる)。これはギリシア以来の西欧形而上学を支配していたロゴス中心主義への根底的批判であり,この考え方が次に見る文化記号学,文化記号論の基盤になったと言えよう。…

【メルロー・ポンティ】より

…つまり,たしかに一方では個人的な言語行為(パロール)が社会的に制度化された言語体系(ラング)にのっとって行われるにちがいないにしても,他方では,意思を疎通し合おうとする相互主観的実存の行うパロールこそがラングを創造し支え変革してゆくのだ,というソシュールの考えをいっそう深めつつ受けいれることによって,身体的主観とそれによって生きられる世界とがそれぞれに厚みを増し,両者の関係も〈構成する構造〉と〈構成される構造〉の弁証法的関係としてとらえられるようになるのである。1940年代末にはじまる〈ソルボンヌ講義〉や,50年代初頭に執筆されながら生前未刊に終わった《世界の散文》(1969),そして《シーニュ》(1960)に収録された諸論文において彼は,こうした視点から言語,芸術,歴史,社会の問題に鋭い考察を加えている。初期,中期を通じて彼が〈現象学〉を心理学,社会学,言語学など人間諸科学や,社会,政治思想,芸術などの進歩と歩みをともにし,その成果を統合してゆく〈開かれた哲学〉としてとらえ,現象学の展開に新たな可能性を約束したこと,また中期の彼がおのれ自身の初期の実存主義を内的に乗り越えることによって,60年代以降の構造主義やポスト構造主義を準備したことは,注目されてよい。…

※「シーニュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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