[1] 〘自サ変〙 たっ・す 〘自サ変〙
① 対象にとどく。及ぶ。
(イ) 人や物が、離れた他のある場所にまでいたる。
※
小学読本(1873)〈
田中義廉〉二「予、彼郷に、達するときは、速かに、音信して」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「君若し一村に達(タッ)するの路を指示し玉あらば」
(ロ) 評判、知らせ、気持などが他のある人にとどく。伝わる。
※
平家(13C前)一一「
便宜をうかがひ高聞に達せしめ」
※
太平記(14C後)一一「賢才の誉
(ほまれ)、兼てより叡聞に達
(タッ)せしかば」
(ハ) 望みがかなう。目的が成就する。
※平家(13C前)三「今汝が所望達せば」
(ニ) ある時になる。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉四「各七日ごとに、二夜は暁に達するまで眠らずして」
(ホ) 程度が、ある限度にまで及ぶ。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一〇「吸水管は〈略〉これより長れば、吸力達せず」
② 程度が、究極に及ぶ。
(イ) 最高の
境地にいたる。また、深く通じる。広く知り及ぶ。
※今昔(1120頃か)一四「利仁、心猛くして其の道に達せる者にて」
※屋代本平家(13C前)三「管絃の道に達し、才芸世に勝れて御坐しければ」
(ロ) 完全にその状態になる。多く「達して」「達したる」の形で、すっかり、まったく、完全な、などの意で用いられる。
※
サントスの御作業(1591)一「シシタル モノラ ヲ ヨミガエシ タマワバ、taxxite
(タッシテ) シンズ ベシ ト イエリ」
③ 官位が高くなる。
[2] 〘他サ変〙 たっ・す 〘他サ変〙
① 対象にとどかせる。及ぼす。知らせ、命令、気持などを他のある人に伝える。
※平家(13C前)四「軍士を得て後、案内を達せんとするところに」
② 目的、望みなどをとげる。達成する。
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「命あれば前途を達(タッス)ること、異国本朝に多かりき」
※平家(13C前)七「義仲去じ年の秋、宿意を達せんがために」
③ 物事を広く見通す。達観する。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)五「ふかく罪福の相を達(タッ)(〈注〉サトリ)して、あまねく十方をてらす」