一心(読み)イッシン

デジタル大辞泉 「一心」の意味・読み・例文・類語

いっ‐しん【一心】

多くの人々が心を一つにすること。同心
心を一つの事に集中すること。また、その心。専念。「会いたい一心で探し続ける」
仏語
㋐あらゆる現象根源にある心。
浄土真宗で、真実の信心
[類語]熱心一心不乱一生懸命本気本腰真剣身が入る身を入れるシリアスひたすらいちずひたむき一筋ただただただ専一ひとえに一念一路一散一目散一直線一本槍一点張り一辺倒一意専心営営せっせ遮二無二無二無三がむしゃら脇目も振らずまっしぐらしゃかりきしゃにむに無心粉骨砕身無我夢中熱中夢中直線的専心専念没入没頭没我傾注傾倒猪突猛進ストレート我を忘れるこんを詰める身を入れる身を砕く心血を注ぐ

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精選版 日本国語大辞典 「一心」の意味・読み・例文・類語

いっ‐しん【一心】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 心一つ。一つの心。自分の心。また、こころ。
    1. [初出の実例]「衆生一心上、即有二相」(出典:法華義疏(7C前)方便品)
    2. 「一心清浄の誠を致し」(出典:平家物語(13C前)二)
    3. [その他の文献]〔荘子‐天道〕
  3. 心をただ一つのことに集中すること。他事を思わない心。専念。→一心に
    1. [初出の実例]「三箇日夜、永絶食飲。一心念仏」(出典:日本往生極楽記(983‐987頃)尋静)
    2. 「帰りたい帰りたい一心でね」(出典:化銀杏(1896)〈泉鏡花〉九)
    3. [その他の文献]〔書経‐盤庚下〕
  4. 人々の心を一つに合わせること。
    1. [初出の実例]「億兆一心、国家の総力を挙げて」(出典:米国及び英国に対する宣戦の詔書‐昭和一六年(1941)一二月八日)
    2. [その他の文献]〔荀子‐議兵〕
  5. 仏語。(認識論的な意味で)世界を表わし出すものとしての心。唯心。
    1. [初出の実例]「欲談一心趣、三曜朗天中」(出典:性霊集‐三(835頃)中寿感興詩)
    2. 「争(いかで)か平等の一心をさとり、無相の妙体に合(かな)はむ」(出典:梵舜本沙石集(1283)三)
  6. 仏語。六波羅蜜(ろくはらみつ)の中の禅定(ぜんじょう)のこと。
    1. [初出の実例]「忍辱、精進、一心、智慧、転相教化」(出典:往生要集(984‐985)大文一〇)
  7. 仏語。信心のこと。仏より与えられた信。
    1. [初出の実例]「一心は金剛の信心なり」(出典:一念多念文意(1257))

一心の語誌

( 1 )梵語 eka-citta の訳としての「ある一つのことだけを考える」の意から、「ある対象に心を集中して、心を動かさないこと」というの意味が生じる。ここから、「一心不乱」「一心念仏」、また、漢語副詞としての「一心に」などのさまざまな語が生まれた。
( 2 )は、「一個人が心を一つのことに集中する」場合であるが、の漢籍例「荀子‐議兵」などには、主に戦争の場面で、「多くの人が心を一つに合わせる」という意味でも用いられ、日本においても戦中の文書によく現われる。


ひとつ‐こころ【一心】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 混じり気のない、ただひとつの思い。
    1. [初出の実例]「ちぢのなさけも おもほえず ひとつこころぞ ほこらしき〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三)
  3. 心が通じあって、ひとつになること。同じ気持であること。
    1. [初出の実例]「国母、大臣ひとつこころにてこそ、ことをはかりけれ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
  4. 本当の気持。本心。
    1. [初出の実例]「只おのれ等が一つ心(ココロ)よりいでたるは」(出典:読本・昔話稲妻表紙(1806)一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一心」の意味・わかりやすい解説

一心
いっしん

仏教における一心の一は数学上の1、2、3の概念ではなく、絶対なる全を表す。すなわち、万有の事象の基底にある絶対的真実を一心と考えてよい。仏教の最初期の文献には、このような意味の一心はなかったが、大乗仏教の文献に頻繁にみられるようになった。そこでは、あらゆる現象の根源に存在する心とか、衆生(しゅじょう)に内在する真実なる心識(しんしき)とかの意味で用いられた。『華厳経(けごんきょう)』に「現象界は虚妄であり、それはただ一心のつくりたるものである」と述べられているが、この一心の実体について後世の学僧は、如来蔵(にょらいぞう)とか仏性(ぶっしょう)とかといい、さらに阿頼耶識(あらやしき)とも考えた。また、一心は禅定(ぜんじょう)と同義にも用いられる。この場合の一心は心を一つにすること、一つの対象に心を向ける意味である。したがって心の動揺を静めることをいい、坐禅(ざぜん)時の精神統一を一心で表したり、念仏時に阿弥陀(あみだ)一仏を念じ、他の仏を念じないことを一心で表したりする。

[田上太秀]

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朝日日本歴史人物事典 「一心」の解説

一心

没年:文政4.10.2(1821.10.27)
生年:明和8.4.2(1771.5.15)
江戸後期の木曾御岳の行者。信濃国小県郡上本入村(長野県小県郡武石村本入)生まれ。俗名を橋詰長兵衛といった。のちに江戸に出て,下谷車坂町穀物商丸山重兵衛の養子となり,さらに一家を創立して信濃屋又四郎と称した。42歳のときに妻子の死に遭い仏門に入る。下谷金杉の万徳寺恵性和尚の弟子となり,さらに大乗院役僧福寿院順徳の弟子となって本明院一心と号した。木曾御岳を深く信仰し,御岳行者普寛の法統を継いで布教と講の結成に努めた。御岳講の御座立儀礼などの行法や祈祷法の確立に多大なる影響を与えた。文政3(1820)年,不穏な教説を説いたとして幕府の弾圧を受け,遠島の刑に処せられ,翌年配所で牢死した。のちに弟子や信者によって木曾御岳王滝口に一心堂や霊神碑が建立され,埼玉県深谷市には霊場が設けられた。<参考文献>生駒勘七『御岳の歴史』

(牧野真一)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「一心」の解説

一心 いっしん

1771-1821 江戸時代後期の行者。
明和8年4月2日生まれ。武蔵(むさし)深谷(埼玉県)の侠客(きょうかく)であったが,妻の死を契機に木曾御岳(おんたけ)信仰にはいる。武蔵の修験僧(しゅげんそう)普寛(ふかん)のひらいた王滝口の先達(せんだつ)となり,江戸を中心に講を組織。不穏な教説を説いたとして幕府に弾圧され,文政4年10月2日牢死(ろうし)した。51歳。信濃(しなの)(長野県)出身。俗名は橋詰長兵衛。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一心」の意味・わかりやすい解説

一心
いっしん

仏教用語。宇宙の事象の基本にある絶対的な真実。真如 (しんにょ) のこと。また,阿弥陀仏のみを念じる心または念仏のみに専念する心をいう。また,仏陀救済を信じる心は,その本質が仏陀の心そのものであって,このような信仰を得た人は,凡夫でありながら仏陀の心をそなえているので,このような心を仏凡一体の一心と呼ぶ。

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普及版 字通 「一心」の読み・字形・画数・意味

【一心】いつしん

心が一致する。 ひたすら。専心。〔書、泰誓上〕予(われ)に臣三千るも、惟(こ)れ一心なり。

字通「一」の項目を見る

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「一心」の解説

一心
(通称)
いっしん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
一心工夫の掛物
初演
元禄12.10(江戸・森田座)

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367日誕生日大事典 「一心」の解説

一心 (いっしん)

生年月日:1771年4月2日
江戸時代後期の木曽御岳の行者
1821年没

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