[1] 〘名〙
① 二人またはそれ以上が一組となること。
(イ) 一組。一つがい。
※延喜式(927)一三「凡車駕行幸者、舎人四番〈以
二十二人
一為
二一番
一〉
供奉」
(ロ) 歌合・相撲・競べ馬などの勝負の第一組。
※類従本民部卿行平歌合(885‐887頃)「一番郭公 左勝」
※
今昔(1120頃か)二三「競馬有けるに、一番に尾張兼時・
下野の敦行乗りたりける」
② 一回。一度。
※平松家本平家(13C前)一「舞も定めて能かるらん。一番見んぞや」
※今鏡(1170)九「碁盤とりよせ〈略〉、一番がほどに例ざまにならせ給ける」
※虎寛本狂言・文相撲(室町末‐近世初)「今一番取らうと仰せらるる」
(ハ) 一般に、一回の試み、また一度の行為や作用。
※
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「時宗の坊主、比丘尼と一ところにて、雨の中寂しさに、一ばんと思ひ」
※
浄瑠璃・
神霊矢口渡(1770)四「一番ごっきりで義興めを、川中でぐ
はんと云はせた」
③ 順序の最初。最上位。第一。
(イ) 最初。まっ先。先頭。
※延喜式(927)二〇「其貢進之次、以二左近一為二一番一」
※車屋本謡曲・鉢木(1545頃)「一番に馳せ参ずべし」
(ロ) 最もすぐれていること。最も大切なこと。程度が最も大であること。
※九冊本宝物集(1179頃)六「良弁僧正と云は、東大寺一番の別当也」
※滑稽本・
東海道中膝栗毛(1802‐09)六「一ばんの桶さア買てきなさろ」
(ハ) その日の最初に出る
汽車や電車、船などの乗り物。
※泊客(1903)〈柳川春葉〉一「恐らく明日の朝一番で出るだらう」
(イ)
芝居で下座の合方が鳴り物として、打込みにたたく
大太鼓。初めは縁
(ふち)を回してたたき、後、どどんどんどんとたたくもの。
(ロ) 寄席で、
開場と同時に大太鼓を長桴
(ながばち)で打ち込むこと。
[2] 〘副〙
① こころみに一度。ためしにちょっと。また、「
緊褌一番」などの形で、ひとつ思い切っての意を表わす。
※浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)四「こっちも一番いうた跡は、モウいざこざはないわいの」
※日の出前(1946)〈太宰治〉「チルチルなるもの、
感奮一番せざるを得ない」
② 最も。何より。別して。
※咄本・無事志有意(1798)
拳酒「一ちばんすきなしたみ酒」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈
夏目漱石〉一「一番先に見付けたものが」