伸びる(読み)ノビル

デジタル大辞泉 「伸びる」の意味・読み・例文・類語

の・びる【伸びる/延びる】

[動バ上一][文]の・ぶ[バ上二]
ものの長さ・高さ・広がりが増す。
㋐(伸びる)生長して、長くなったり、高くなったりする。「背が―・びる」「すらりと―・びた脚」「枝が―・びる」
㋑(延びる)もとからある物につなげられて長くなる。「バス路線が郊外まで―・びる」
㋒(伸びる)ある段階・範囲にまでおよぶ。達する。「司直の手が―・びる」「つい菓子に手が―・びてしまう」
㋓(伸びる)まがったり、ちぢんだりしていたものがまっすぐになったり、ひろがったりする。「腰が―・びる」「しわが―・びる」
㋔(伸びる)全体にうすく、均質にひろがる。「よく―・びる塗料」
㋕(伸びる)時間がたって、長い状態になったり、しまりなくやわらかくなったりして弾力がなくなる。「そばが―・びる」
㋖(伸びる)さんざんなぐられて動けなくなってしまう。ひどく疲れてぐったりする。グロッキーになる。「過労で―・びる」
(伸びる)勢いや力が増す。
㋐大きく盛んになる。発展する。「輸出が―・びる」「会社は順調に―・びている」
能力などがつき、向上する。「記録が―・びる」「学力が―・びる」
(延びる)
㋐時間的に、長くひろがる。「日脚ひあしが―・びる」
㋑命などが長く保つ。長生きする。「平均寿命が―・びる」
期日時刻が、決められたその時よりおくれる。「事故で出発が―・びる」
危機をのがれて、かろうじて命を長らえる。
「今まで御命の―・びさせ給ひて候ふこそ不思議に覚え候へ」〈平家・三〉
緊張がとける。のんびりとする。くつろぐ。
「空もうららかにて人の心も―・び」〈・絵合〉
女に夢中になって本心を失う。
「ひったり抱き寄せしみじみ囁く…(与兵衛ハ)忝いと―・びた顔付き」〈浄・油地獄
[類語](1㋐)伸長する生長する成長する/(1㋖)ばてるくたばるへたばるへばるへこたれる顎を出す精も根も尽き果てるグロッキーくたっとぐたっとくたくたぐたぐたぐだぐだぐったりうんうんふうふうへとへと奄奄えんえんよれよれげんなり/(2伸張する伸展する発展する躍進する拡大する増大する向上する引きのばす広げる広がる/(3㋒)延引する遅延する遷延する順延する繰り下がる延び延び延期日延べ猶予延滞遅滞先送り先延ばし引き延ばす引き延ばし繰り延べる繰り延べ繰り下げる持ち越す時を稼ぐ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「伸びる」の意味・読み・例文・類語

の・びる【伸・延】

  1. 〘 自動詞 バ上一 〙
    [ 文語形 ]の・ぶ 〘 自動詞 バ上二段活用 〙
  2. [ 一 ] 空間的に広がる。
    1. 広がる。また、長くなる。
      1. [初出の実例]「若経のしじまれるか、若はこののひたるかとて」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
      2. 「老いの波の皺、のぶばかりに人めかしくて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    2. 生長する。
      1. [初出の実例]「人の生るる時が、一尺五寸ぞ。其れが一年に三寸づつのぶるぞ」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)三)
    3. ゆるんで長くなる。
      1. [初出の実例]「此河は西国一の大河ぞや。腹帯(はるび)ののびてみえさうぞ」(出典平家物語(13C前)九)
    4. 遠くへ位置を変える。遠くへにげる。にげのびる。
      1. [初出の実例]「いまは宮もはるかにのびさせ給ひぬらんとやおもひけん」(出典:平家物語(13C前)四)
    5. そば・うどんなどが長くなったまま弾力がなくなる。また、ゴムなどが古くなって弾力がなくなる。
      1. [初出の実例]「客人や思ひの外にのびつらん ふできなれ共いたすうんどん〈不竹〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)一)
    6. 溶けたり、やわらかくなったりして、よくひろがる。「膠(にかわ)がよくのびる」
    7. 疲れたり、なぐられたりして、ぐったりする。ぐったりして動けなくなる。また、死ぬ。
      1. [初出の実例]「ノビたる以上は、不思議と患者も酒を要求しなくなるのである」(出典:閑散無双(1934)〈徳川夢声〉天国に結ぶ病院)
  3. [ 二 ] 時間的に広がる。
    1. 命などが長く保つ。久しくなる。
      1. [初出の実例]「疾病を離れて寿命延びて長からむ」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)二)
    2. 期日・時刻が先になる。また、期間・時間が予定より長くなる。延引する。
      1. [初出の実例]「山の御門の御賀ものびて秋とありしを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  4. [ 三 ] 心理的な状態についていう。
    1. ( 「心がのびる」の形で ) のびのびとする。くつろぐ。ゆったりする。
      1. [初出の実例]「三月の十日のほどなれば、空もうららかにて、人の心ものび」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
    2. ( 「鼻毛がのびる」の意から ) 異性に心を奪われる。異性にまいる。
      1. [初出の実例]「あまりしたるく、のびたるけしきのみゆるは〈略〉尤たしなむべき事也」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)上)
      2. 「ひったり抱き寄せしみじみ咡く、色こそ見へね河与が悦喜、エ忝いと、のびた顔付」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上)
  5. [ 四 ] 量や能力などの状態についていう。
    1. 財産が豊かになる。金がたまる。金が残る。
      1. [初出の実例]「此利にて〈略〉百五拾貫目延(ノ)びるなり」(出典:浮世草子・好色敗毒散(1703)四)
    2. ゆたかになる。盛大になる。
      1. [初出の実例]「商売に精を出し、毎年のびる店おろしを」(出典:浮世草子・子孫大黒柱(1709)四)
    3. 勢力、能力などがつく。発展する。勢いがよくなる。
      1. [初出の実例]「近来の御作はのびぬやうなりと云ひたれば」(出典:随筆・蘐園雑話(1751‐72頃))
    4. 相場が騰貴する。
      1. [初出の実例]「頭重く伸び兼ねたる商況にて本日も諸株総て不活発の有様を呈し」(出典:朝野新聞‐明治二四年(1891)四月一一日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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