デジタル大辞泉
「兄」の意味・読み・例文・類語
こ‐の‐かみ【▽兄/▽首/▽氏上】
《「子の上」の意から》
1 長男。
「―を箭田珠勝大兄の皇子と曰す」〈欽明紀〉
2 兄。または、姉。
「この男の―も衛府の督なりけり」〈伊勢・八七〉
3 年上の者。年長者。
「それが年は、われにこよなく―にぞおはせし」〈宇津保・蔵開中〉
4 うじのかみ。氏の首長。
「諸氏の人等、各可き―を定めて申し送れ」〈天武紀〉
5 多くの人の上に立つもの。かしら。
「その―と思へる上手ども」〈源・若菜下〉
せ【▽兄/▽夫/背】
1 女が男を親しんでいう語。主として夫・恋人をさす。⇔妹。
「信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましむな沓はけ我が―」〈万・三三九九〉
2 女の側から兄または弟をよぶ語。⇔妹。
「人ならば母が愛子そあさもよし紀の川の辺の妹と―の山」〈万・一二〇九〉
え【▽兄】
同性の者のうちの年長者。特に、兄弟・姉妹で年上の者。⇔弟。
「かつがつもいや先立てる―をし枕かむ」〈記・中・歌謡〉
[補説]「え(兄)」と「おと(弟)」との複合が「えと(干支)」である。→干支 →十干
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
あに【兄】
〘名〙
① 親を同じくする者同士で、年上の男子。実兄。え。せ。
いろせ。このかみ。しょうと。いろえ。⇔
弟。
※伊勢物語(10C前)七九「あにの中納言行平(ゆきひら)のむすめの腹なり」
② 妻や夫の兄弟で妻や夫より年上の男子、また、姉の夫など。義兄。
義理の兄。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏「義兄(アニ)だって貴方、左に右く医者ですし」
※
書紀(720)安閑即位前(寛文版左訓)「勾大兄広国押武金日天皇は男大
(をほ)迹天皇の長子
(アニみこ)なり」
④ 男が他の者より年長であること。
※
浮雲(1887‐89)〈
二葉亭四迷〉一「今一人は、前の男より二つ三つ兄らしく」
⑤ 年配者が若い男を親しんで呼ぶ語。また、若者のうちで年長者、実力者。
※
随筆・
胆大小心録(1808)一三八「兄々といふて、関とりも関分も、小どもあしらいした事じゃ」
※雑俳・柳多留‐
三七(1807)「兄ははや盛りが過て吉野山」
あにい【兄】
〘名〙
① あにき。あに。
※少年行(1907)〈
中村星湖〉四「阿哥
(アニイ)も、お前商売をして居りゃア、多少
(いくらか)屈托もあらあナ」
②
勇み肌の若者。また、その若者を呼ぶ語。多く江戸、東京地方で用いる。
※
洒落本・禁現大福帳(1755)序「山手の
惣領(アニイ)が、惣勘定といふ高慢らしい赤本を貸て行しゆへ」
※
塩原多助一代記(1885)〈三遊亭円朝〉三「小平哥々
(アニイ)失錯
(へまあ)遣ちゃアいけねへぜ」
③ あまり賢くない若者を呼ぶ語。
※談義本・風流志道軒伝(1763)序「夫馬鹿の名目一ならず。〈略〉但同じ詞にて兄イといへば、少しやさしく、利口にないといへば、人めったに腹を立てねど」
え【兄】
〘名〙 (「え」は元来ヤ行のエ) 年長であること。また、その者。年長者。⇔
弟(おと)。
※
古事記(712)中・歌謡「かつがつも 最前
(いやさき)立てる 延
(エ)をし枕
(ま)かむ」
[語誌](1)
上代語では
複合語の一部として用いられることが多い。単独の形の挙例「古事記‐中・歌謡」も「兄」でなく「善」と解釈する説がある。また、「兄磯城
(えしき)」に対する「弟磯城
(おとしき)」のように、「おと」とひとくみで用いられることが多い。
(2)兄弟姉妹の間柄では兄と姉を指したが、姉の場合「あね」と併用された。平安時代以降は「あに」「あね」と交替した。→「
おとうと」の語誌
けい【兄】
[2] 〘代名〙 対称。男子が書簡などで、先輩・同輩などを敬っていうのに用いる。
※浦上春琴宛頼山陽書簡‐文化一一年(1814)一二月七日「兄の所レ得、南海にて得候分歟」
[3] 〘接尾〙 男子が書簡などで、先輩・同輩の氏名などに付して敬意を表わすのに用いる。
※今昔(1120頃か)九「昔、
兄と同学で有し人也、互に恩深りき」
ひん【兄】
※浄瑠璃・恋女房染分手綱(1751)二「サア手まへたひんを、ササまき出せ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報