(読み)ゼン

デジタル大辞泉 「全」の意味・読み・例文・類語

ぜん【全】[漢字項目]

[音]ゼン(呉) [訓]まったく すべて まっとうする
学習漢字]3年
欠けるところがない。すべて備わっている。「全人全能安全完全健全十全不全保全万全
ある範囲内のすべてにわたるさま。みな。まるまる。すっかり。「全員全快全権全校全国全集全焼全身全体全長全般全部全文全滅全面全裸全力
[名のり]あきら・うつ・たけ・たもつ・とも・はる・まさ・また・みつ・やす・よし

ぜん【全】

[名]
欠けたところがないこと。すべてであること。
本の巻数冊数などを表す語に先立って用い、その数ですべて、あるいはひとそろいであることを表す。「三巻」「五冊」
[接頭]名詞に付いて、すべての、全部の、の意を表す。「学生」「世界」「責任」

うつ【全/空/虚】

[接頭]
(全)名詞に付いて、すっかり、全く、全部の意を表す。
「皮を―はぎにぎて」〈・上〉
(空・虚)名詞に付いて、うつろな、空虚な、の意を表す。
「―せみはからを見つつもなぐさめつ深草の山煙だにたて」〈古今哀傷

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「全」の意味・読み・例文・類語

まったく【全】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 形容詞「まったい」の連用形から )
    1. 完全にその状態であるさまを表わす。すべて。完全に。落度なく。
      1. [初出の実例]「弟の頼長公は、全(マッタク)経を宗とし世務きりとをしにて」(出典:静嘉堂本撰集抄(1250頃)六)
      2. 「まったく外界との交渉を絶たれた父が」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)
    2. 特に、否定表現を伴って、完全な否定の気持を表わす。全然(…でない)。決して(…でない)。
      1. [初出の実例]「其の頭を鑊に入れて、七日煮るに、全く不乱ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)九)
    3. 自分がこれから示す判断、いま相手から聞いた判断が、嘘や誇張を含まない真実であることを、強める気持を表わす。ほんとうに。実際に。
      1. [初出の実例]「是等は決して西洋人のおかげといふではないが、全く交易のおかげではござらんか」(出典:交易問答(1869)〈加藤弘之〉下)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 すべて。全部。
    1. [初出の実例]「先づ腹部を切開して、それから胸腔に及んで、内臓の全くを露出する」(出典:解剖室(1907)〈三島霜川〉)

ぜん【全】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. すべてであること。
      1. [初出の実例]「半をとき、全をとくにしたしからず」(出典:正法眼蔵(1231‐53)仏向上事)
    2. 本の巻数や冊数などを示す語に先立って、その表わす数がひとまとまりであるの意を添える。「全十巻」「全五冊」など。
  2. [ 2 ] 〘 接頭語 〙
    1. 身分立場を示す名詞の上について、その立場にあるもののすべてという意を添える。「全学生」「全国民」など。
    2. 下にくる語の意味や内容のすべてを含んでいるという意を添える。「全世界」「全日本」「全収入」「全責任」など。
      1. [初出の実例]「全地球上一切情界のみ」(出典:花柳春話〈織田純一郎訳〉題言(1878‐79)〈<著者>成島柳北〉)

うつ【全・空・虚】

  1. [ 1 ] 〘 造語要素 〙
    1. 名詞の上に付き、すべて、全部、すっかり、の意を添える。ごく古い時期に使われた語で、用例は少ない。「うつぬき」「うつはぎ」「うつはた」など。
    2. 名詞の上に付けて、空虚なこと、からっぽである意を添える。「うつせみ」「うつき」「うつじん」「うつゆう」など。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 「うつけ(空)」の略 ) うっかり者。おろか者。ぼんやり。
    1. [初出の実例]「それがしとても、秤目知らぬほどの虚(ウツ)でもなし」(出典:浮世草子好色敗毒散(1703)四)

全の補助注記

[ 一 ]の意の「うつ」は、なお「うつろ・うつせ貝」などに見られ、「うつく(うつける)」という動詞をもつくる。


まったき【全】

  1. 〘 連体詞 〙 ( 文語形容詞「まったし」の連体形から ) 完全な。欠けたところのない。文語的ないい方。
    1. [初出の実例]「人間の存在の自由のまったき証明を、彼はまだ思いもつかなかったのである」(出典:アカシヤの大連(1969)〈清岡卓行〉七)

まっとうまったう【全】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 形容詞「まったい」の連用形から変化したもの ) まともなさま。実直であるさま。まじめ。
    1. [初出の実例]「まっとうにすりゃ本店も見ては居ず」(出典:雑俳・柳多留‐八(1773))

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