デジタル大辞泉
「合点」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
がっ‐てん【合点】
〘名〙
① 和歌、連歌、俳諧などを批評する際に、よしとするものに点をつけること。また、その点。通常は右句頭に鉤点
、
、判者二人以上のときは左鉤点、º点、・点などを用いる。
※
古今著聞集(1254)五「定家朝臣のもとへ点をこひにやりたりければ、合点して、
褒美の詞など書付侍とて」
②
人名を書き並べた
文書などに鉤型の線で印
(しるし)をつけること。とくに回状、
廻文(めぐらしぶみ)などを見終わり、承知の意を示すために自分の名前の上につけた鉤型の線。
※玉葉‐文治二年(1186)四月六日「早任二合点一可二計行一」
③ (━する)
相手の言い分などを承知すること。なるほどと納得すること。また、承知してうなずくこと。首肯
(しゅこう)。がてん。
※保元(1220頃か)上「もっともしかるべきよし、がってん申されけるうへは、子細におよばず」
※
咄本・譚嚢(1777)三人一座「五匁づつ二人ながら、おれが所へよこしやれ。がってんだと、飛ぶがごとくに行」
④ (━する) 事情をよく知っていること。また、事情を理解すること。がてん。
※
浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)四「
天狗といふものは、めいよ人の心におもふ事を其ままに合点
(カッテン)をする物ぞかし」
⑤ そうした心づもりでいること。覚悟していること。がてん。
※
仮名草子・元の
木阿彌(1680)上「それこそよきがってん。あすは少々御見物しかるべし」
が‐てん【合点】
〘名〙 (「がってん(合点)」の変化した語)
① (━する) 相手の言い分、事情などを理解すること。承知すること。がってん。
※虎明本狂言・
成上り(室町末‐近世初)「物のへんずると申す事は、
目前にあって、がてんのまいらぬふしぎなことでござるぞ」
② 覚悟すること。そうした心づもりでいること。がってん。
※俳諧・独吟一日千句(1675)第三「もしほ草かき文の取やり うき契世間へしるる合点にて」
※浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)上「ぜひ
当年は請け出して、
女房に持るるがてん持
(もつ)約束と」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
合点 (がってん)
古文書学上の用語。物事を確認し照合したしるしとして,文書の語や句の横に斜めに引いた線のこと。書状を受け取った人が,急いで返事を書くときには,勘返状といって,その書状の返事をしようとする所に合点を付し(これを勘を付けるともいう),その行間に小さく返事を書く。案文(あんもん)のうちで証拠書類として重要なものは,しかるべき人が正文と対照して,確認したしるしに〈校正了〉というような言葉を入れて,重要な個所に合点を加え,さらに裏に花押をすえる場合がある。これを校正裏封案文といい,正文と同等の効力をもつ。重要な道具や文書の出し入れを記した道具(文書)出納日記などには,合点を付し,その日付を記して出し入れを確認している。算用状や土地台帳など数字に関する文書では,それを確認し,または案文を作成する際,照合のしるしとして合点を付す。これらの場合には朱で合点が行われることもある。特殊なものとしては,合戦手負注文の人名に合点が加えられるが,それは奉行が確認したことを示す。中世の寺院で事務を司どった年預(ねんよ)などは選挙で選ばれるが,選挙人は投票をする人の名前に合点を付し,その数が多い人が当選となる。これを合点状という。《貞丈雑記》には,〈廻状などに点をかくるも合点也〉とみえるが,文殿や使庁の廻文,寺院の請定(しようじよう)や廻請(かいじよう)で了解の意味をあらわすには〈奉(うけたまわる)〉という字を入れる。これらの文書の人名の上に合点が加えられているのは,指定の日時に参着したことを示す。
執筆者:上島 有
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報