デジタル大辞泉
「唾」の意味・読み・例文・類語
つ【▽唾】
つば。つばき。唾液。
「盗人たちは、…いずれも―をのんで、身動きもしない」〈芥川・偸盗〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
つ‐ばき【唾】
〘名〙 (動詞「つはく(
唾吐)」の連用形から転じた語。古くは「つはき」「つわき」)
唾液腺(だえきせん)から口中に分泌される消化液。唾液。唾汁。つ。つば。
※
書紀(720)神代上(兼方本訓)「亦、唾
(ツハキ)を以て白和幣
(しらにきて)と為、洟
(よたり)を以て青和幣
(あをにきて)と為」
※古本説話集(1130頃か)一九「心地あしげにて、つはきをはき、ふしたり」
※
日葡辞書(1603‐04)「Tçubaqi
(ツバキ)。Tçufaqi
(ツハキ)よりもまさる。〈訳〉唾液。Tçubaqiuo
(ツバキヲ) スル、または、
ハク」
[語誌](1)「十巻本和名抄‐二」に「都波歧」、「新撰字鏡」にも「豆波支」とツハキの語形が見える。院政期加点と目される「高僧伝長寛元年点」に、「唾手
(ツワキハイテ)」とツワキの語形が見えるところから、ツハキ→ツワキの
変化が指摘できる。
(2)
ツバキと濁音化した例は、室町時代から見られ、「堯空本節用集」に「唾 ツバキ」と見えるほか、挙例のように「日葡辞書」の
見出し語にも掲げられている。
(3)室町時代には、ツバキのほかに、ツハキ、ツワキ、ツ、ツハ、ツバ、ツワの語形が存する。このような
状態は
江戸時代まで続くが、次第にツバキがツバと共に優勢となる。なお、ツハキ→ツハケ、ツバキ→ツバケの変化も室町時代以降に生じたものの、
一般化せず
俗語の域に止まっていた。
つ【唾】
〘名〙 つばき。つば。唾液(だえき)。
※観智院本名義抄(1241)「吒 ツ」
※日蓮遺文‐法華題目鈔(1266)「
梅子のすき声
(な)をきけば口につたまりうるほふ」
※
談義本・風流志道軒伝(1763)跋「飲めば津
(ツ)にむせるばかりおかしけれども」
[
補注]「虎寛本狂言・蛸」に「息つまって、うつぶせにおしふせられて、づをはいてぞ伏たりける」と濁音形が見られ、虎明本では「ず」とある。
つば【唾】
〘名〙 (古くは「つは」「つわ」とも)
※
サントスの御作業(1591)一「tçuua
(ツワ) ヲ ハキ」
※
太政官(1915)〈
上司小剣〉六「
大阪で講釈聴いた真似やないか。皆眉毛に唾液
(ツバ)附けや」
② (九州地方で)唇。〔日葡辞書(1603‐04)〕
つばけ【唾】
〘名〙 (古くは「つはけ」「つわけ」か) 「つばき(唾)」の変化した語。
※日本書紀兼倶抄(1481)「今も
につはけを吐くことあり」
つば‐・す【唾】
〘自サ変〙 唾をはく。唾をはきつける。また、唾棄する。うとんじてかえりみない。
※馬骨人言を難ず(1901)〈登張竹風〉「一たび馬骨人言を読めるものは何人と雖ども、ニイチェに唾(ツバ)せずんば已まざるが如くならんを期して」
つかい‐・す つかひ‥【唾】
〘自サ変〙 つばをはく。唾をかける。
※斯道文庫本願経四分律平安初期点(810頃)「時に偸蘭難陁比丘尼見て之に唾(ツカヒス)」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の唾の言及
【厠神】より
…出産後3日目に〈雪隠(せつちん)参り〉といって生児が産婆に抱かれて厠神に参る風も東日本を中心に見られる。また厠で唾を吐くものでないという禁忌も広く行われ,犯せば厠神が怒って目や歯にたたるという場合が多い。青森では,厠神は右手で小便,左手で大便を受けるので,唾をすると口で受けねばならないからだと説明している。…
【唾液】より
…俗に〈つば(唾)〉〈つばき〉ともいい,口外に流れ出た唾液を〈よだれ(涎)〉という。大部分は耳下腺,顎下腺,舌下腺から,一部は口腔内の多数の小唾液腺から分泌される無色・無味・無臭の液体。…
※「唾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」