デジタル大辞泉
「寝」の意味・読み・例文・類語
い【▽寝】
寝ること。眠り。
「心とけたる―だに寝られずなむ」〈源・空蝉〉
[補説]多く、動詞「ぬ(寝)」をあとに伴って「いをぬ」「いぬ」の形で、また、「朝寝」「安寝」などと熟して用いる。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ね‐か・す【寝】
① ねむるようにする。寝つくようにする。ねさす。ねかせる。
※俳諧・武玉川(1750‐76)三「寐かして置ていなのささ原」
※
滑稽本・
浮世風呂(1809‐13)二「香箱の上へ、人形のべべをしき、おふとんをきせてねかしおき」
② 物などを横にたおす。縦のものを横にする。横にならせる。ねかせる。
※雑俳・柳多留‐二(1767)「帆ばしらの立ったをねかす舟びくに」
③ 十分活用せずに手もとに置く。特に、商品や資金を使わずに、手もとに置いておく。ねかせる。
※内地雑居未来之夢(1886)〈
坪内逍遙〉三「六七年資本を停滞
(ネカ)すも、別に
難義なりと思はざらんが」
④ 麹
(こうじ)、
納豆(なっとう)などを室に入れて十分黴
(かび)を発生させる。また、味噌
(みそ)、醤油
(しょうゆ)、酒などを仕込んで、熟成させる。ねかせる。
※菓子話船橋(1841)「饅頭皮製方〈略〉一夜ねかしおく時はよく熟(なる)なり」
ねか・せる【寝】
〘他サ下一〙 ねか・す 〘他サ下二〙
※
油地獄(1891)〈
斎藤緑雨〉一五「寝られぬものを無理に寝
(ネ)かせ」
※俳諧・武玉川(1750‐76)九「寐かせば声の消る
帆柱」
※売文集(1912)〈堺利彦編〉
巻頭の飾・
諛辞〈清水友次郎〉「
利息の高い此世にあって折角の品を寝かせ置くは馬鹿なことなればなり」
ね【寝】
[1] 〘名〙 (動詞「ねる(寝)」の
連用形の
名詞化) ねること。ねむり。
※
万葉(8C後)一四・三三六六「ま愛
(かな)しみさ禰
(ネ)に吾は行く
鎌倉の水無の
瀬川に
潮満つなむか」
※
伊勢物語(10C前)二「起きもせずねもせで夜をあかしては春のものとてながめ暮しつ」
[2] 〘
語素〙 物の古くなって役に立たなくなったものの意を添える。「寝
(ね)粉」「寝
(ね)糸」
い‐ね【寝】
〘名〙 (動詞「いぬ(寝)」の連用形の名詞化)
① 寝ること。また、寝つき。
※
日葡辞書(1603‐04)「Ineno
(イネノ) ワルイ ヒト、または、ヨイ ヒト」
② 眠っている時のかっこう。寝相(ねぞう)。
※雑俳・たからの市(1705)「乗合の居寝のわるさに抱付て」
な・す【寝】
〘他サ四〙 (「ぬ(寝)」の他動詞形) 眠らせる。寝させる。
※万葉(8C後)五・八〇二「いづくより 来たりしものぞ 目(ま)な交(かひ)に もとなかかりて 安眠(やすい)し奈佐(ナサ)ぬ」
ね・れる【寝】
〘自ラ下一〙 (「ねる(寝)」の可能動詞) 寝ることができる。本来「寝られる」であるが、五(四)段活用からできた可能動詞「帰れる」「乗れる」などにひかれてできたいい方。
※蟹工船(1929)〈小林多喜二〉四「畜生、困った! どうしたって眠(ネ)れないや」
な・す【寝】
〘自サ四〙 (動詞「ぬ(寝)」に上代の尊敬の助動詞「す」が付いて音の変化したもの) 「ぬ(寝)」の尊敬語。おやすみになる。お眠りになる。
※古事記(712)上・歌謡「をとめの 那須(ナス)や板戸を 押そぶらひ 我が立たせれば 引こづらひ」
しん【寝】
〘名〙 寝ること。やすむこと。就寝。また、寝る場所。ねどこ。寝室。
※実隆公記‐享祿二年(1529)正月一日「遅明驚レ寝」 〔礼記‐間伝〕
ね‐さ・す【寝】
〘他サ五(四)〙 寝るようにする。寝るようにさせる。ねかす。
※咄本・鹿野武左衛門口伝はなし(1683)上「明ても暮てもながもちのすみにねさしておきたる故に」
ね・せる【寝】
〘他サ下一〙 ね・す 〘他サ下二〙 ねるようにする。ねかす。
※俳諧・落穂集(1663)三「やにこきをねせて置ぬるたばこ哉〈詞顕〉」
しな・す【寝】
〘他サ四〙 寝さす。ねむらせる。
※塵袋(1264‐88頃)一〇「人をねさするをしなすと云ふは」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報