デジタル大辞泉
「憤」の意味・読み・例文・類語
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いきどおろし・い いきどほろしい【憤】
〘形口〙 いきどほろ
し 〘形
シク〙 (動詞「いきどおる(憤)」の
形容詞化)
① 心がはればれしない。不安でゆううつだ。
※
書紀(720)神功摂政元年・
歌謡「
淡海の海
瀬田の渡りに 濳
(かづ)く鳥 目にし見えねば 異枳廼倍呂之
(イキドホロシ)も」
※綱の上の
少女(1926)〈
片岡鉄兵〉「私は金持ちが羨しく、そして憤
(イキド)ほろしかった」
いきどおろし‐さ
〘名〙
いく・む【憤】
〘自マ四〙 (「息含(いくく)む」の変化した語) 心に怒りを含む。いきどおる。いくくむ。いくぶ。
※書紀(720)皇極三年正月(岩崎本訓)「乃ち蘇我臣入鹿が
君臣(きみやつこらま)、
長幼(このかみおとと)の序を失ひ、
社稷(くに)を
(うかが)ふ権
(はかりごと)を挟
(わいはさ)むことを憤
(イクミ)」
いく・ぶ【憤】
※書紀(720)皇極三年正月(北野本訓)「乃ち蘇我大臣入鹿が君臣
(きみやつこ)、〈略〉社稷
(くに)を
(うかが)ふ権
(はかりごと)を挟
(わきはさ)みていることを憤
(イクヒ)」
いきどお・る いきどほる【憤】
〘自ラ四〙
※
万葉(8C後)一九・四一五四「伊伎騰保流
(イキドホル) 心の
うちを 思ひのべ うれしびながら」
② 恨み怒る。はげしく立腹する。憤慨する。
※大唐西域記長寛元年点(1163)七「列士恩に
感じ、事の成らざるを悲しび、憤
(イキドホリ)恚みて死ぬ」
むずか・る むづかる【憤】
〘自ラ五(四)〙 (古くは「
むつかる」「むずかしい(むつかしい)」と
同源)
①
機嫌が悪くなる。ぶつぶつと
小言をいう。腹を立てる。むつける。
※書紀(720)欽明二三年一一月(寛文版訓)「
使人、悉に
国家(みかど)の、
新羅の
任那を滅すに憤
(ムツカリ)たまふを知りて」
※
平家(13C前)八「まづ
三の宮の
五歳にならせ給ふを〈略〉大にむつからせ給ふ」
むつ・ける【憤】
〘自カ下一〙 むつ・く 〘自カ下二〙 (「むずかる(むつかる)」と同語源)
※
玉葉‐建久二年(1191)一〇月五日「伝奏定長云、頗逆鱗歟、殿下御返事到来之後、むつけさせ給つつ」
② 健康を害する。衰弱する。弱る。
※玉塵抄(1563)二一「馬病馬のやうでむつけたことぞ〈略〉馬もやみむつけたぞ」
いきどおり いきどほり【憤】
〘名〙 (動詞「いきどおる(憤)」の連用形の名詞化) 強い不平や恨み、怒りなどをいだくこと。心が晴れないで悩み苦しむこと。また、そういう気持。
※書紀(720)允恭二三年三月(図書寮本訓)「遂に窃(ひそか)に通(たは)けぬ。乃ち悒懐(イキドホリおもひ)少しく息(や)みぬ」
※平家(13C前)二「法皇の御いきどをり深かりしかば」
いきどおろし いきどほろし【憤】
いきどおらし いきどほらし【憤】
〘形シク〙 腹だたしい。嘆きたいほどなさけない。いきどおろし。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報