政策保有株式(読み)せいさくほゆうかぶしき(英語表記)political share ownership

日本大百科全書(ニッポニカ) 「政策保有株式」の意味・わかりやすい解説

政策保有株式
せいさくほゆうかぶしき
political share ownership

企業などが政策投資を通じて保有する株式。

 株式保有の動機には、大別して純投資と政策投資とがある。純投資は利潤証券観の立場から配当金の取得や値上がり益の享受を目ざすもので、株式投資のもっとも一般的な姿である。これに対して、政策投資は支配証券観に立脚した投資を含む特殊な形態であり、銀行が融資先企業の株式を取得したり、企業間では取引先との関係強化や経営参加・系列化、敵対的買収防衛を目的としたりする場合もある。安定株主の確保という観点からは、株式持ち合いも政策投資の一種といえる。

 政策投資は純投資のように株式保有による直接的な利得を求めるものではないが、取得した政策保有株式が企業経営上にメリットを与えなければ、企業の財務戦略として合理的な行為とはいえないし、株主や投資家からの理解も得られない。このため、政策保有株式については、投資社会から保有制限や情報開示を求める声も強く、これを受けて制度面での整備も進んでいる。2019年(平成31)1月には、「金融商品取引法」の規定に基づく「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正が行われている(同年3月期から適用)。

 この結果、上場企業の場合、(1)純投資と政策投資の区分の基準や考え方、(2)保有方針および保有の合理性を検証する方法や保有の適否に関する取締役会等における検証の内容、(3)売却・買い増しした政策保有株の銘柄数やおのおのの売買理由、(4)経営方針・経営戦略等、事業内容およびセグメント情報と関連づけた定量的な保有効果、などを有価証券報告書に記載することが義務づけられた。また、これらの開示対象は貸借対照表計上額の上位60銘柄に拡大されている(従来は30銘柄)。

 政策保有株式が企業の安定経営に資する面は否定できないが、その実施のハードルは高まる傾向にあり、縮減圧力が強まる環境下で、企業のなかには自己株式の取得(自社株買い)などにその代替機能を求める動きもみられる。

[高橋 元 2021年12月14日]

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