(読み)しょう

精選版 日本国語大辞典 「正」の意味・読み・例文・類語

しょう シャウ【正】

〘名〙 (「しょう」は「正」の呉音)
① 正しいこと。また、かざりけがなく、まことであること。
※勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章「第二正説。正者経之正体」
※神皇正統記(1339‐43)上「常に冥の知見をかへりみ、神の本誓をさとりて、正に居せんことを心ざし」
② いつわりのない本当の物事。
※浮世草子・諸道聴耳世間猿(1766)三「生た麝香はこれぢゃ。正のものを生でお目にかける」
※塩原多助一代記(1885)〈三遊亭円朝〉一五「正(シャウ)のお話でありますが」
③ (形動) ある物と少しも違わないこと。そっくりそのままであること。また、そのさま。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「姑婆の口まねは、あの婆に正(シャウ)だよ」
④ (数詞の上に付き、接頭語のように用いて) ちょうど。かっきり。
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)三「正七ツ時の御登城」
冬枯(1965)〈庄野潤三〉三「私は正一合入りの酒を頼んだ」
⑤ 令制の諸司の長官。かみ。
※令義解(718)職員「采女司 正一人」
⑥ (「じょう」とも) 令制の位階を上下の二種に区別し、下位を従とするのに対して、その上位の称。「正一位」「正三位」など。
⑦ 一の意の青物市場符丁

まさ‐し・い【正】

〘形口〙 まさし 〘形シク〙
① 事柄の本性にかなっているさま。正当である。正真正銘である。ただしい。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「是正(マサシキ)善根なり」
※平家(13C前)四「まさしゐ太上法皇の王子を討ちたてまつるだにあるに」
② 占いなどが当たってその通りに実現するさま。見込み通りである。また、よく言い当てるさま。予想が確かである。
※古今(905‐914)恋四・七〇〇「かく恋ひんものとは我も思ひにき心のうらぞまさしかりける〈よみ人しらず〉」
古今著聞集(1254)八「文平と申陰陽師こそ、此比掌をさして推察まさしかなれ」
③ 疑う余地なく、確実であるさま。確かである。
※観智院本三宝絵(984)上「我が身を捨てむ事今正しく此の時也り」
④ 現実に起こるさま。実際である。
※栄花(1028‐92頃)浦々の別「二位は夢をまさしく見なして」
⑤ 実直である。忠実である。〔日葡辞書(1603‐04)〕
まさし‐さ
〘名〙

ただし・い【正】

〘形口〙 ただし 〘形シク〙
① 形や向きがまっすぐである。ゆがんだり曲がったりしていない。横向きになったり、わき道にそれていない。
※金剛般若経讚述仁和元年点(885)「聴者端(タタシク)視ること、飢渇せるがごとくす」
読本・春雨物語(1808)死首のゑがほ「元輔、曾次の前に正しく向ひて」
② 形が整っている。きちんとしている。
※大智度論天安二年点(858)「容貌正(タタシク)して色乱れず」
③ 道徳、規則、道理、作法、約束の時間など規範とされているものにかなっている。また、事実に合っている。まちがっていない。正統である。
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「理正しき者其の言を直(ただしく)す」
徒然草(1331頃)一五〇「道のおきてただしく、是をおもくして放埒せざれば」
[補注]漢文訓読文に多く、平安朝のかな文献にはほとんど見られない。
ただし‐さ
〘名〙

せい【正】

〘名〙
① ただしいこと。まちがいないこと。
霊異記(810‐824)上「祈はくは奇記を覧る者、邪を却け、正に入り、諸悪作すこと莫く、諸善奉行せむことを」
太平記(14C後)一八「若一言の下に、邪を翻し、正に帰する事もやあらんずらんと思ひければ」 〔易経‐乾卦〕
② 本来あるもの。もとからあるべきもの。また、主たるもの。
※名語記(1275)六「めは正也。まは権也」
③ 長。主任。かみ。〔礼記王制
④ 書物などの正編の略。
⑤ 数学で、数が零より大きいこと。プラス。⇔
⑥ 数詞の一つ。一〇の四〇乗をさす。
⑦ 哲学で、弁証法の三段階の一つ。定立。→正反合

まさしく【正】

(形容詞「まさし(正)」の連用形。現代語では副詞的に用いる) ⇒まさしい(正)

ただし【正】

〘形シク〙 ⇒ただしい(正)

まさ‐し【正】

〘形シク〙 ⇒まさしい(正)

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デジタル大辞泉 「正」の意味・読み・例文・類語

せい【正】[漢字項目]

[音]セイ(漢) ショウ(シャウ)(呉) [訓]ただしい ただす まさ
学習漢字]1年
〈セイ〉
間違いがなくただしい。いつわりがない。「正解正確正義正邪正当正道正否厳正公正純正真正適正不正方正
ただしくする。ただす。「改正規正矯正校正𠮟正しっせい修正粛正是正訂正補正
ちょうどその状態である。まさに。「正中正反対
本筋にかなっている。本来のもの。「正価正史正字正式正装正統正編正門
おさ。長。「里正検事正
数学で、プラスの数。「正数正負
〈ショウ〉
ただしい。いつわりがない。「正気正直正真正銘
ちょうど。まさに。「正午正面・正一時」
本筋の。本来の。「正客正本
おさ。「僧正そうじょう
年の初め。「正月賀正
[名のり]あきら・おさ・きみ・さだ・たか・ただ・ただし・つら・なお・のぶ・まさし・よし

せい【正】

正しいこと。「よく邪を制す」⇔
正式なもの。主となるもの。「副二通」⇔
書物などの、正編。「続二巻」
長。主任。「検事
ある数が零より大きいこと。プラス。「の整数」⇔
イオン電極などの電荷がプラスであること。陽。⇔
定立ていりつ
[類語]本当真実真個真正正真しょうしん正真正銘まこと

しょう〔シヤウ〕【正】

[名]
本当であること。
「つくろいなき―の処」〈一葉・ゆく雲〉
律令制で、諸司の長官。
位階を上下に分けたもののうち、上の階級の称。「一位」⇔じゅ
ふつう、時間や量を示す語の上に付いて、きっちりその時間や量であることを表す。「八時」「一合」
[名・形動ナリ]そっくりそのままであること。また、そのさま。
姑婆しうとばばあの口まねは、あの婆に―だよ」〈滑・浮世風呂・二〉

まさ【正】

[名・形動]確かなこと。正しいこと。また、そのさま。→まさ
「法印様はほんに見通しであり、―な事を言ひなんすから」〈人・恩愛二葉草〉

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岩石学辞典 「正」の解説

この接頭語にはいくつかの意味がある.(1) ローゼンブッシュは様々な変成岩の前につけて火成岩に由来した意味で用い,正片麻岩(orthogneiss)などと使用した[Rosenbusch : 1891].一般にはローゼンブッシュの使い方が行われている.(2) ヨハンセンはこの接頭語をカリ長石に富む岩石に使用したが[Johannen : 1920],後にカリ(kali-)という接頭語に置き換えた[Johannsen : 1931].(3) シャントはこの語をSiO2に飽和した岩石に使用した[Shand : 1927].

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