現在(読み)ゲンザイ

デジタル大辞泉 「現在」の意味・読み・例文・類語

げん‐ざい【現在】

[名](スル)
過去未来の間。過去から未来へと移り行く、今。また、近い過去や未来を含む、今。副詞的にも用いる。「数千年の時を経て現在に至る」「現在のところ見通しは立っていない」「現在、出張中です」
(時間を表す語の下に付き、接尾語的に用いて)変化する物事の状態をある時点で区切って示すときの、その時点。「八月末日現在の応募者数」
現に存在すること。目の前にあること。「現在する最重要課題」
(「現在の」の形で血縁関係などを表す語を修飾して)正真正銘の。まぎれもない。
「いはんや彼らは―の孫なり。しかも嫡孫なり」〈曽我・三〉
(副詞的に用いて)明白な事実であるさま。また、近い将来そのことが実現するのが確実であるさま。
「そなたは―奥様になることぢゃ」〈浮・棠大門屋敷〉
仏語。三世さんぜの一。今、生をうけているこの世。現世。
文法の時制の一。今の時点での動作・状態など表すときに用いる形。現在形。
[類語](1いま只今ただいま目下もっか刻下現下現時点現時今日こんにち方今当今現今きょう日当世時下/(3存在実在実存現存厳存げんそん存立所在既存そんする

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精選版 日本国語大辞典 「現在」の意味・読み・例文・類語

げん‐ざい【現在・見在】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] 時間の流れを三つに区分した一つ。過去と未来との間。
    1. 仏語。三世の一つ。今現に生を受けているこの世。現世。
      1. [初出の実例]「若(もし)是過去の福因を植ゑずして現在の貧果を得たるか」(出典海道記(1223頃)花京の老母)
      2. [その他の文献]〔倶舎論‐二〇〕
    2. 過去と未来のさかいめ。時の流れの中で、過去と異なり今、目の前という短い時をいう場合と、今に近い過去や未来を含めたある期間をいう場合とがある。いま。
      1. [初出の実例]「当筵須見在歓、身後浮名酒一中」(出典:六如庵詩鈔‐二編(1797)五・甲寅中秋〈略〉泛舟遊巨椋湖各賦)
      2. 「そのころの幸福は現在の幸福ではなくて、未来の幸福の影を楽しむ幸福で」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
    3. 変動するものの状態をある時点で記述する際、その時点を示す語に添える。「一月一日現在」
    4. 文法で、用言を、現在または時間を越えた作用や状態を表わすものとして用いる語法。また、英語やフランス語などの動詞の時制で、現在形の用法
      1. [初出の実例]「惣而しは過去のし・未来のし・現在のしとて此等也」(出典:密伝抄(1455頃か))
  3. [ 二 ] ( ━する ) 目の前にあること。現に存在すること。また、その場にありあわせること。
    1. [初出の実例]「寛治御調度、于今見在者、被彼、不其難」(出典:玉葉和歌集‐嘉応二年(1170)一〇月二五日)
    2. 「我はこれ大国秦始皇の再誕なり。日域に機縁ありて、今現在(ゲンザイ)す」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)四)
    3. [その他の文献]〔史記‐斉悼恵王世家〕
  4. [ 三 ] ( 血縁肉親などの関係に関して ) 目の前にあって疑いのないさま。まぎれもない事実であるさま。
    1. ( 「の」を伴って連体詞的に用いられて ) まぎれもない。正真正銘の。
      1. [初出の実例]「いかに勲功を望めばとて、相伝の主を討ち現在の聟を害しける忠宗が所存をば」(出典:平治物語(1220頃か)中)
    2. ( 副詞的に用いられて ) たしかなさま。疑いもないこと。
      1. [初出の実例]「ははがたいなゐに、七月はんにおすてあったるわかなれば、けんさいちちにあふたりとも、わがちちともまたわがことも、ゑみしるまひよ」(出典:説経節・説経苅萱(1631)下)

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普及版 字通 「現在」の読み・字形・画数・意味

【現在】げんざい

いま。いま存在する。〔仏国記、上〕王舍利をつの處、處に皆し、り。今悉(ことごと)く現在す。其の中、人民亦た稀曠(きくわう)、止(た)だ衆のみり。

字通「現」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「現在」の意味・わかりやすい解説

現在
げんざい
present

時は基本的に過去,現在,未来の3つに区分される。しかし,現在は,ほかの2つに比べると意識実践に関して著しい優越性をもつ。意識において過去や未来が,いずれも「について」意識され,しかも,いまの意識によって意識されるものであるのに対し,現在は,それと同時に意識するものとしてありうる唯一の時である。他方人間行為の面からみると,現在は人間が自由に行為することを許された唯一の時である。この点から,過去は必然性に,現在は自由に,未来は可能性に関係づけられることがある。現在のこの2つの優位性は,早くから注目されていて,その永遠化の試みは,古来,宗教哲学において絶えず行われてきた。 (→カイロス , 瞬間 )

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世界大百科事典(旧版)内の現在の言及

【時間】より

…そうした人間と世界の接点に示される〈今〉〈過去〉〈未来〉の三つの様態を貫くものが時間である,と定義することもできよう。もっとも,過去,現在,未来という時間の三態のどこに主眼点を置くか,という問題は時間をめぐる重要な論点の一つである。例えばインドの仏教経典では,この三態の順序はほとんどつねに過去,未来,現在として取り上げられるが,それは,現在のみが時間としてリアルにとらえられていることを示しているとみられる。…

【時制】より

…日本語で〈時称〉あるいは〈テンス〉とも呼ばれる。伝統文法では,話者の発話の時点を基準にしてそれを現在とし,前後を過去および未来とするシステムがたてられた。英語でjumped―jump―will(shall) jumpを過去形―現在形―未来形と呼ぶのもそれにならったものである。…

※「現在」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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