翻訳|hedge
生きた植物によってつくられた垣根。樹木を列植して,刈り込んで形を整えたものが多い。
他の垣根や塀に比べると物理的な強さが劣り,維持管理に手間がかかるが,造成時の経費が少なく,永続性があり,災害時の危険性が少ない。さらに重要なことは,生きた植物のもつ特性,すなわち生命感をもつ色彩の美しさ,変化性,柔軟性,適応性,総合性などから観賞用,装飾用としてもすぐれた特徴をもつ。またその効用には,境界を区別する,外部からの侵入を防止する,内部を遮へいする,防風・防火など災害を防止する,自然感を強め景観をよくする,植物の活動による微気象の調節,酸素生成,植物体の有害成分・塵埃(じんあい)の吸収・吸着などによる大気浄化,適度の通風など環境保全・改善の働きが大きいなどがある。以上のように,生垣は人間生活とその環境を考えると好ましい面を多くもつ。
生垣には次のような種類がある。(1)刈込みの有無による 無刈込生垣,刈込生垣。(2)生垣の高さによる 高垣(3m以上),低垣(1m以下),普通垣(その中間)。(3)生垣の構成による 1段垣,2段垣,多段垣。(4)使用植物の種類による 単植垣(サワラ生垣,バラ生垣などと称する),混植垣(混ぜ垣ともいう)。(5)仕立て方による 総刈生垣(全体を一様に刈り込み連続的に仕立てる。さらに断面の形から方形生垣,梯形生垣,円頂生垣などに分ける),玉刈生垣(植物それぞれが丸く刈り込まれて両側で接する),波状生垣(その中間形)。(6)使用植物の性状,使用目的などによる 花垣,果樹垣,蔓(つる)垣,竹垣,笹垣,茨(いばら)垣,土坡(どは)垣(生垣の基部を土盛りして小高くしたもの)。
使用する植物の多くは樹木である。これは幹が堅固で自立性が強く,また永続性があることによる。生垣樹としての適合性は次のとおりである。(1)原則として周年葉をもつ常緑樹が望ましい。(2)枝葉が密生し,下枝の枯れ上がりが少なく,葉の形状が美しい。(3)性質強健,生長力盛んで,密植に耐える。(4)環境に対する適応性が大きい。(5)挿木や播種(はしゆ)により苗木が大量に生産できる。(6)移植しやすく,よく活着する。(7)刈り込んでも萌芽力が大きく,萌芽が早い。(8)病虫害が少なく,栽培管理しやすい。(9)人畜無害である。このようにして選ばれた生垣樹のうち多く使用される樹種を生垣の種類と合わせて表に示す。
生垣の造成で問題になるのは,建物などの関係で日照不足になる場合であるが,日陰によく耐える樹種を選ぶことがたいせつである。造成に際しては,一般には竹垣をつくり,それに沿って生垣樹を植え込む。生垣の管理は刈込みが中心であり,通常年2回(梅雨季と晩秋)以上行う。このために植物は消耗が激しくなり,抵抗力も弱まるので,施肥が必要となり,病虫害の防除,支柱立てなども行う必要が生ずる。
日本の特色ある生垣は京都に多い。桂垣と称されるハチクを折り曲げて編んだ桂離宮の竹垣や修学院離宮上の茶屋の外縁の大刈込(おおかりこみ)といわれる混植生垣などである。また,強風地帯にはしばしば防風のための高垣がつくられる。関東地方の農村にはシラカシの高垣があり,島根県出雲地方の築地松(ついじまつ)といわれるクロマツの高垣はその地方独特の景観をつくっている。また,外国ではイギリスのヘッジローhedgerowのように,農地と農地,農地と共有地,村と村の境界をかたちづくり,地域の自然保存の役割も果たす大きな生垣もある。
→垣
執筆者:北村 文雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…この先物ドル買い(先物円売り)によって,輸入契約に盛られたドル債務の円価値が,輸入契約締結時において確定する。 以上が先物カバーの概略であるが,これに対し,ヘッジhedgeの場合は,〈外貨建債権(債務)の保有者が為替リスクを回避するために,同額の外貨建債務(債権)を負う〉という,より広い意味に用いられる場合が多い。たとえばドル建ての長期債権をもつ日本の会社が,ドル切上げによる損失を避けるために,ドル建ての株式・社債等を発行し,外貨建ての債権・債務を等しくしておく場合などがヘッジと呼ばれる。…
…そのうち,檜垣(ひがき)はヒノキの薄板を網代(あじろ)のように編んだものを木製の枠に張ったもの,透垣(すいがき)は割竹を縦に編むように木製の枠に張ったもので,立蔀(たてじとみ)(格子に薄板を張ったもの)とともに建物の近い周囲に多く用いられた。そのほか中世の武士や庶民の住いなどでは,枝つきの木を人字形に組んだ鹿垣(ししがき)や柴垣,竹を編んだ垣,木枝や竹を格子状に組んだ籬(まがき),種々の樹木を植えた生垣(いけがき)が多く用いられた。 江戸時代の城下町につくられた武家屋敷でも,屋敷の周囲には,築地のほかにいろいろな生垣が用いられた。…
…しかし古代には都市そのものが市壁で守られ,人家は稠密(ちゆうみつ)に建てられていたので,市内の建物に塀をめぐらすことはまれであった。他方,市外の農場や牧場は石や土を積んだ石垣や土塁,あるいは灌木の生垣で囲んで,動物の侵入や逃亡を防いだ。また,古代ローマのウィラも,もちろん塀や石垣で囲まれていた。…
※「生垣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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