デジタル大辞泉
「言葉」の意味・読み・例文・類語
けと‐ば【▽言葉】
「ことば」の上代東国方言。
「父母が頭かきなで幸くあれて言ひし―ぜ忘れかねつる」〈万・四三四六〉
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こと‐ば【言葉・詞・辞】
- 〘 名詞 〙 社会ごとにきまっていて、人々が感情、意志、考えなどを伝え合うために用いる音声。また、それを文字に表わしたもの。
- ① 話したり語ったり、また、書いたりする表現行為。
- [初出の実例]「百千(ももち)たび恋ふといふとも諸弟(もろと)らが練(ねり)の言羽(ことば)は我は頼まじ」(出典:万葉集(8C後)四・七七四)
- ② ものの言いかた。口のききかた。話しぶり。
- [初出の実例]「此の蕪(あらき)辞(コトハ)を截てて其の実録を採らむ」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
- ③ たとえて言ったこと。言いぐさ。
- [初出の実例]「『塵をむすんで成とも暇(いとま)の印を下され』『夫(それ)は安い事じゃ』と下におちてあるちりをひらいむすびやる『是はことばでこそあれ、何成とも目に立た印を下されと云事でござる』」(出典:波形本狂言・引括(室町末‐近世初))
- ④ 表現された内容。
- (イ) 口頭で語った内容。話。語り。
- [初出の実例]「『黒鳥のもとに白き波寄す』とぞいふ。このことば、何とにはなけれども物言ふやうにぞ聞こえたる」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二一日)
- (ロ) 発言されたもの、記載されたものを問わず、一つのまとまった内容を持つ表現。作品。
- [初出の実例]「今の世に聞こえぬことばこそは弾(ひ)き給けれ、とほむれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
- 「されば文明のころ、其道さかんなりし聖たちの言葉、今の掟となりて」(出典:俳諧・花はさくら(1801)三聖図讚)
- (ハ) 文字で記されたもの。特に手紙をさしていう。
- [初出の実例]「文を書き置きてまからん。〈略〉とてうち泣きて書くことばは」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ⑤ うた(特に和歌)に対して、散文で書かれた部分。歌集では詞書(ことばがき)の部分。
- [初出の実例]「女のもとより、ことばは無くて、君や来し我や行きけむ思ほえず夢か現(うつつ)か寝てかさめてか」(出典:伊勢物語(10C前)六九)
- 「言ひたがへ給ふ事、詞にても哥にても無かりけり」(出典:大鏡(12C前)二)
- ⑥ 絵巻物、絵草子などで、絵に対して文字で書かれた詞書の部分。
- [初出の実例]「よく書いたる女絵の、ことばをかしう付けて多かる」(出典:枕草子(10C終)三一)
- ⑦ 種類としての言語。国語。
- [初出の実例]「かの国人聞き知るまじく思ほえたれども、〈略〉ここのことば伝へたる人に言ひ知らせければ」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二〇日)
- ⑧ 用語。語彙(ごい)。
- (イ) 語句。単語。
- [初出の実例]「よろづの草子・歌枕、よく案内(あない)知り、見つくして、そのうちのこと葉を取り出づるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
- (ロ) 連歌などで、「名(体言)」「てにをは」とともに、語彙を三分した一つ。主に今の「用言」をさす。
- [初出の実例]「一、韻字 物の名と詞の字と是を嫌ふべからず」(出典:連理秘抄(1349))
- (ハ) 「てにをは」に対して、体言、用言をさした称。〔手爾葉大概抄(鎌倉末‐室町初)〕
- ⑨ 音楽で、旋律を伴う部分に対して、非旋律的な部分。「詞」という字をあてる。
- (イ) 能楽、狂言などで、リズムを持ったふしをつけずに抑揚によって唱(とな)える部分。対話、独白などの散文的な部分に多くみられる。
- [初出の実例]「ふしもことはも拍子も相応たり」(出典:申楽談儀(1430)音曲のかかり)
- (ロ) 近世邦楽で、対話や独白などを、旋律的でなく唱える部分。日常の言葉のように写実的でなく、多少様式化され、類型的である。対話や独白でも、変化をつけるため、ふしをつけて唱えることがあるが、それは含めない。詞に少しふしをつけたものをイロ詞という。
- [初出の実例]「詞誰かれといはんより、紫式部しかるべしとの宣旨也、地式部勅意(ちょくゐ)承り、世に有難き仰にては候へ共わらはいかでか作るべし」(出典:浄瑠璃・源氏供養(1676)一)
- ⑩ 物語などで、地の文に対して、会話の部分。
こと‐の‐は【言葉】
- 〘 名詞 〙
- ① ことば。言語。
- [初出の実例]「まことかと聞きて見つればことのはを飾れる玉の枝にぞありける」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ② 和歌では、特に木の葉に掛けて用い、愛を伝えることばや人のうわさなどの意を表わす。
- [初出の実例]「今はとてわが身時雨にふりぬれば事のはさへにうつろひにけり〈小野小町〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋五・七八二)
- ③ 和歌。うた。
- [初出の実例]「やまとうたは、ひとのこころをたねとして、よろづのことの葉とぞなれりける」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
けと‐ば【言葉】
- 〘 名詞 〙 「ことば(言葉)」をいう上代東国方言。
- [初出の実例]「父母が頭かきなで幸(さ)く有れて言ひし気等婆(ケトバ)ぜ忘れかねつる」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三四六)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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言葉 (ことば)
〈ことば〉という日本語の原型は〈こと(言)〉であり,〈ことば〉はその派生語として,おそらく7,8世紀のころより用いはじめられたらしい。最古の日本語文献である《古事記》《万葉集》の場合,〈ことば〉は数例しかみられないのに対し,〈こと〉は〈よごと(寿詞)〉〈かたりごと(語り事)〉〈ことあげ(言挙げ)〉〈ことわざ(諺)〉,また〈ことほぐ(言祝ぐ)〉〈ことどう(言問う)〉などの複合語形で多数みいだされるからである。そしてこれらの〈こと(言)〉は,意味的に〈こと(事)〉と区別することがほとんどできない。たとえば〈ことあげ〉〈ことどう〉などが〈言挙・事挙〉〈言問・事問〉と両様に表記されている点にその消息がうかがえる。つまり古くは名辞としての〈こと〉と現象としての〈こと〉はなお未分化であった。そこから古代地名伝説のひとつの型--特定の土地の命名者がただちにその所有者,支配者となるという話柄も生まれてきている。
もっともすべての言語が〈事〉と一体視されたわけではなかった。一般日常の言語行為は〈いう〉で示されているが,それに対して〈言〉〈言挙げ〉〈言立つ〉などは〈いう〉とは区別される改まった言葉づかいに属し,そうした〈言〉においてのみ〈事〉をなしとげる呪力を持つと信じられたのである。〈ことだま(言霊)〉とはこのような特定の言語への信頼をあらわした語で,おそらく〈ことだま〉は神授のものと意識されていたであろう。
したがって,〈事〉と区別された〈言〉のみを意味する〈ことば〉という語の出現には,〈言・事〉の分化,言語そのものへの自覚の高まりが示されている。またそうした自覚は,従来の音声言語に対するあらたな書記言語(文字)の普及により促されたとみられる。
〈ことば〉の語義は〈言の端〉とも〈言の葉〉とも解されるが,この語のその後の通用は,たとえば〈うた〉の世界において多少とも聖なる由緒を伴う共同体や宮廷の歌謡が世俗化,自由化され,個の抒情詩に展開してゆく過程とほぼ重なっていたようだ。10世紀初頭の《古今和歌集》仮名序には,〈やまと歌は,人の心を種として,よろづの言の葉とぞなれりける〉とあり,そこに〈言〉=〈事〉の原始的対応にかわる,〈人の心〉と〈ことば〉の対応がみいだされる。
なお〈言の葉〉は〈ことば〉の歌語にあたり,12世紀ごろまでの識字層においては,前者を雅言,後者を俗語の意に使いわけていた形跡があるが(《源氏物語》など),以降そうした区別はうすれてゆき,〈ことば〉の語はおおむね現代に等しい用法,語義が定着するにいたる。ただ社会進化のなかで言語体系の記号化が強められ,〈ことば〉は〈うわべの……,口先きだけの……〉という含意を増しつつある形勢がうかがえる。一般に詩人,文学者の言語・文字による営為を,そうした状況への批評と位置づけることが可能だが,たとえば宮沢賢治が〈まことのことばはうしなはれ 雲はちぎれてそらをとぶ……〉(《春と修羅》)とうたうとき,そこでは原初の力ある〈ことば〉の回復が志向されているといえよう。
→言語
執筆者:阪下 圭八
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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言葉
藤原定による詩集。1989年刊行(沖積舎)。1990年、第8回日本現代詩人賞を受賞。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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世界大百科事典(旧版)内の言葉の言及
【言語】より
…人間同士の意思伝達の手段で,その実質は音を用いた記号体系である。〈ことば〉ということもあるが,〈ことば〉が単語や発話を意味する場合がある(例,〈このことば〉〈彼のことば〉)ので,上記のものをさす場合は,〈言語〉を用いた方が正確である。また,人間以外のある種の動物の〈言語〉をうんぬんすることも可能ではあるが,その表現能力と,内部構造の複雑さおよびそれとうらはらの高度な体系性などの点で,人間の言語は動物のそれに対して質的なちがいを有している。…
【声】より
…声の強さは,声帯が閉じる強さや,下方からの気流の圧力によって決まる。そのほか声が口から出てくるときにはことばの音としての音色をもつが,〈アー〉とか〈エー〉とかいうような母音の音色は喉頭より上側の共鳴腔の形で決まる。ことばには母音のほかに子音という成分があるが,これは喉頭のみでなく,舌,あご,くちびるなどの共鳴腔をつくっている器官がすばやい,しかも複雑な運動をすることによって生ずる。…
【単語】より
…ことばの最も基本的な単位として,我々が日常的・直観的に思い浮かべるのが単語である。そして我々はこの単語を一定のルールに従って結合させ,より大きな単位である[文]を構成し,それを表出することによって,他人との間にコミュニケーションを成立させているのである。…
【品詞】より
…[文法]【湯川 恭敏】
【日本語の品詞研究の歴史】
日本人が日本語の単語について,〈[てにをは]〉の一類を立てたのは恐らく鎌倉時代以前からのことで,漢文訓読法から注意されたと思われる。それ以外を〈名〉(物の名)と〈ことば〉(語,詞)とに分けたのは鎌倉時代末にみえる。この3分類は,十分に文法機能のうえから考察した結果ではなかろうが,17世紀初めのJ.ロドリゲスの《日本小文典》は,日本人が全品詞を〈名,ことば,てには〉の3語に包括していると述べている。…
【分類】より
…〈分類〉とは文字どおり,対象を類に従って(似たものをまとめて)分けることであるが,〈類別〉とは違って,全体を共通性に従って大きく分け,分けたものをさらにまた共通性に従って細分し,これ以上分けることのできない個体の一つ手前(種という)まで順次分けていって段階づけ,体系化することをいう。 分類するという営為はおそらく人類の歴史とともに古く,植物や動物にすでに見られるように,自分と同類のもの(とくに異性)とそれ以外のものに分けることが始まりであったと見られる。…
【幼児語】より
…言葉を話題にして言葉で表現することもできるようになる。そのせいか副詞を用いた限定修飾や,漢語,外来語を用い,成人の使うことばを使いたがる。しかし,たとえば〈時〉についての概念には乏しく,将来のことも〈キノウ〉ですますといった現象も見られる。…
※「言葉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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